文句あんのか | ナノ
姑顔負けの休暇


疲労困憊の状態が何度も目撃され、報告を聞いたルッスは一週間休みなさい!と鬼気迫る勢いでベビーシッターを連れてきた。久々に自室に戻った遼だが、母乳はきちんと与えなければいけないし、よく出る上に飲むチェーザレだから、こまめに搾る必要があった。

「惰眠って素晴らしい。」

ベッドに転がってうたた寝を繰り返す。笑顔は可愛らしいのだが、四六時中テンションを上げて付きっきりは正直辛い。禁酒中なのも手伝って、結構なストレスになっていた。変わらず侵入者探知機もしていたのは無謀とも言える。

「休暇終わったらアメリカ行くかな。」

報告はしていたが、孫の顔は直接見せていない。その内絶対騒ぐ、と遼は確信していた。子煩悩の父親なのだから予測しやすい。手配や連れて行く面子を考えながら、遼はまた寝息を立てて眠り始めた。夢と現をさまようような、緩やかで穏やかな眠りを妨げるのは、スクアーロただ1人。近付く気配に、持てるだけのナイフを構えて不機嫌そうにしている。

「遼、起きてるかぁ?」

「るっせぇ…惰眠貪っちゃ悪いかよ。」

眠いのは事実なので、容赦はしない。ドアが開かれると同時に、ナイフをこれでもかと投げる遼。ベルが投げたナイフを回収して、再利用しているので…下手をすれば毒が塗ってある。しかし、トラップを仕掛ける暇も惜しいぐらい遼の眠気は限界値に近く、全て叩き落とされた。

「大丈夫かぁ?体調悪くしてんのかぁ?」

「るっせぇ…。休みくれたんだから惰眠貪るんだよ。邪魔すんな。」

ボスッ、とベッドに横たわり目を閉じる遼を、スクアーロは見ているしか出来なかった。育児を一手に引き受けている遼だから、疲れもシャレにならない。うるさくすれば、間違い無く蹴り飛ばされる。

「…俺も寝る。」

急に遼を抱き締め、隊服のまま眠ろうとするスクアーロに、殴り飛ばす気力も無い遼は黙っていた。慕わしい血と火薬の臭いに、異臭は混じっていない。ただ、甘えられるスキルを、遼は持っていなかった。

「俺が出来るなら手伝うからなぁ。」

「…ん…。」

気持ちよさそうに、眠りに就く遼は小さく頷いたが話を聞いていない。ピリピリとした敵意は、放たれたままなのだが。スクアーロの長期任務明けに遼が一週間育児を休む、凄まじく作為的な出来事だが遼と居られるならそれでもいい、ときつく遼を抱き締めて目を閉じた。再び目覚めた遼に蹴り飛ばされるまで、存分に2人きりを堪能した。

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