文句あんのか | ナノ
教育上宜しくない


月日が流れるのは早いもので、ハイハイをするようになったチェーザレ。尤も、基本的には遼について回るだけだが冒険心豊かで、よりによってザンザスの部屋に侵入してしまった。

「…カス鮫のガキか。」

露骨に不機嫌な顔をするザンザスだが、レヴィなどの強面に慣れているチェーザレは、じっとザンザスの赤い目を見返している。銀の癖毛は嫌でも若かりしスクアーロを思い出させる。目つきも悪いので尚更だ。

「カス鮫ぇぇぇ!!ガキ放り出すな!!」

腹の底からの怒声に、チェーザレは泣き出した。遼は怒鳴りつけず、威圧するから慣れていない。スクアーロとは違う種類だと解ったのだろう。

「あ、いたいた。サノ悪いな。チェーザレあっちこっち行きたがってて探してたんだよ。」

チェーザレを抱き上げてあやす遼。その目は優しく、殺し合いをする強者とは思いにくい。

「見張っとけカス。うるせぇから次来たらカッ消すぞ。」

「気を付ける。授乳期間終わったらまた飲もうな。いい酒期待してっから。」

「ぼーしゅ?」

ピタリ、と2人共同時に固まった。ルッスとベル、先にどっちを呼ぶかと言っていたが、まさかのザンザスをボスと言うなんて全く考えていなかった。

「ほう?ちったぁマシな教育してんじゃねぇか。上出来だ。」

「そーいやタンタンが教え込んだとかなんとか言ってたな…。よりによってサノをボスと言うか。」

「ぼーしゅ!」

にっこりと笑うチェーザレは悪くない。片腕で抱きながら額に手を当て、深々と溜め息を吐く遼。真っ当な道に行けるとは思っていなかったが、一歳にすらなっていない乳幼児に教えるか?と呆れかえっている。

「遼。ガキに殺し方叩き込んでやれ。」

「俺のやり方馬鹿力前提なんだけど解ってんのかサノ?」

「急所は同じだろうが。ハウスホールド20本。」

「乗った!」

酒好きな遼には魅力的すぎる条件。更にチェーザレを生き抜かせる為に知恵を授けるのだから、一石二鳥で即答したのだった。

「ま、歩くにはもうちょい時間がかかるからな、気長に待ってくれ。死ぬなよ?未来の部下かヴァリアーボスに育ててやるさ。」

「簡単に死んでやる予定はねぇ。さっさとバカカス鮫に償わせろ。」

「ろくでなしと話す暇ねぇんだ今。チェーザレで手一杯なんだよ。」

苦笑しながらザンザスに手を振るチェーザレを抱いたまま、遼はベビールームへと向かった。話す機会があれば、和解も遠くはないと示唆しているのだが。

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