文句あんのか | ナノ
血は争えない
何となく、で互いを名前や愛称ですらない蔑称で呼んでいた遼達。チェーザレが初めて喋ったのは、遼の名前だった。
「王子とルッスどっち先に覚えると思う?」
「そりゃ王子に決まってるでしょ。王子は偉いんだし。」
「チェーザレに王族とか分かんねえって。俺の子供なんだぞ?」
人の気配に敏感で、遼が居なければすぐにぐずりだすチェーザレを抱きながら、お茶を楽しむベルと遼。スクアーロは父親の立場すら無い。
「マーモンみたいにふにふにのほっぺた。生意気になりそー。」
「それは保証する。クソ生意気なガキに育つだろうな。」
ベルに触られても笑顔を振りまき、楽しそうなチェーザレをベルはからかって遊んでいる。一見ベルが父親のように見えてしまう。
「遼の子供だからね。バカ鮫は相変わらず?」
「親バカ丸出しで報われてねぇ。一回見てみろ、泣くまで笑えるから。」
素晴らしく意地の悪い笑みを浮かべて、ベルは肩を揺らす。簡単に想像出来そうな光景だからだ。
「うしし、笑い死ねそう。ホント嫌われたね、バカ鮫。ざまあみろ。」
「王子どこでんな品の無い日本語習ったんだ?」
「遼が言ってたから。」
返す言葉も御座いません、とばかりに首を竦める遼だが、未だにザンザスは見に来ていない。見せるつもりも見るつもりも、互いに無い事を知っている。便利な同族嫌悪だ。
「よく笑うんだよな、チェーザレって。王子が暇だと来るからか?」
「さーぁ?遼もチェーザレ見てるとよく笑うけどDVしてないよね?」
「叩いたら千切れそうだぞ普通に。手なんておちおち握れねぇ。」
うつらうつらと船をこぐチェーザレを見ながら、遼は目を細める。出産時は周囲も遼も大変だったのだ。しかし愛着が湧くのが、母なのだろう。
「遼の手加減はヴァリアーじゃなきゃ解んないからね。」
「メリハリが必要だって書いてあったからな、言葉が解るようになったら怒り方も変えなきゃいけない。育児も楽じゃねぇや。」
「親バカのバカ鮫とスパルタな遼だしね。」
「誰にも飼えない狼に育ててやるさ。」
悪・即・斬の名の下、と呟く遼にベルは鋭いツッコミを入れた。
「遼って剣使えた?」
「いやちっとも。何度か見たけど真似出来る器用な人じゃねぇし。」
「ナイフはそこそこ上手いのにね。」
ルッスによって編まれた遼の髪の毛を握らせて、遼はベビーベッドに寝かせた。
「俺の専門は接近戦だからな。」
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