文句あんのか | ナノ
母に似る可能性大


鍛えた腹筋の影響か、目立たない遼の腹部。性別は男だと判明し、ルッスは嬉々として名前を考えては遼に提案している。

「男の子なんでしょ?やっぱりカッコいい名前にしたいわねぇ。遼ちゃんに似たらスッゴくいい男に育ちそうじゃない。」

「…ルッス、お前は俺の親か。大体適当に付けときゃ慣れるだろ。」

「それはダメ!センス無い名前のイケメンなんて肉の無いすき焼きよ!」

「それは最早すき焼きじゃねぇだろ。」

「背も高くなるでしょうし日本語とイタリア語で分けましょうか。」

「…ファミリーネームじゃないセカンドネームか?イタリア人はアリ?」

「アリよ。遼ちゃんは何か案ある?」

「無い。」

即答した遼にルッスは力無くうなだれた。無頓着すぎる。

「本気で適当に名付けるつもりだったのね…。いいわ!アタシが名付け親になるもの!」

「あ、それ楽でいいな。バカなろくでなしロクな名前考えねぇ気がするし。紅茶お代わり。」

「はいはい。遼ちゃんの可愛い子供だしねぇ、伸び伸び育って欲しいわ。」

ポットからお茶を注ぎながら、ルッスは考え続けている。

「子供の名前1つでよくまぁそこまで悩めるな。」

「遼ちゃんから見たら小さな幸せがアタシには無上の幸福なのよ。」

にっこりと笑いながらカップをソーサーに置くルッスを、心底不思議そうに遼は見ていた。

「髪の毛の色が判ればマシな名前考えたんだけどな。黒か銀か、はたまたビミョーな色か。」

「難しいわね。」

「オルトロスとケルベロスとかから引っ張ってくる案だけどな。」

「…遼ちゃん。ギリシャ神話の本読んだわね。」

「あったりー。」

ケラケラと笑う遼に翳りは無い。めげずにスクアーロが部屋に来るからだ。

「遼ちゃんもやっぱり女の子よね。真っ直ぐ見ていられるんだから。」

「現実から目を逸らしても変わらねえ。数えてもいない死人の上に立ってるんだからな。」

「敵わないわ。遼ちゃんは心も体も強くなったもの。十年前より、ずっと。」

幾多の死線を自力で切り抜けた実力。圧倒的な存在感に誰もが目を奪われる戦う姿は美しく、それ故に孤高であった。縛る事すら難しく、スクアーロだけが成し遂げた深みに触れる事。今もなお許しているのだ。

「いや、弱いさ。また裏切られてもおかしくない事してんだ。」

「…遼ちゃん。あのバカが勝手にやり出したんだから遼ちゃんはちぃぃぃっとも悪くないのよ!」

ルッスの勢いに思わず目をぱちくりさせる遼だった。

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