文句あんのか | ナノ
明後日の方を向いて


いつもの軽い(?)運動の後はベルと一緒に一リットル牛乳を一気飲みをする。腰に手を当てたくなるのは…日本人の性だろうか。

「はぁー。ねぇ遼。ずっと気になってたんだけど何で腰に手ェ当てるの?」

「日本文化?昭和ぐらいからの伝統かも。風呂上がりのビール的な。」

「安っぽい飲み屋でとりあえずビールとかそういう文化?」

「そうそう。ビールなんて炭酸水だしな。温泉浸かって日本酒飲むとかいいぞ。露天じゃなきゃつまんねえけど。」

大きな牛乳瓶をトレイに置き、手当てをさせる2人の会話が凄まじく平和。ついさっきまで、殺し合いに近い遊びをしていたとは到底思えない。

「温泉かぁ。オレも買おうかな。オススメある?」

「有名なのは別府か?地獄巡りってあんだよ。まぁただの化学変化による発色とかな。地獄プリンが美味いらしいぞ。卵も当たり前にあると思うけどな。」

「卵?何で?」

「温泉卵だよ。ただ俺が許せねぇのはゆで卵にマヨネーズぶっかけまくるタンタンだな。塩だろ普通。」

卵に対する冒涜だと言わんばかりに顔をしかめる遼だが、嗜好は人それぞれだ。単に遼が塩辛いものが好きなだけで。

「オレも塩。普通和食なら醤油とか味噌とか塩だよね。」

「そーいやヴァリアーの朝飯で目玉焼きとか見ねえなぁ。アレは醤油だけど。固めが好き。」

「目玉焼きって庶民的な料理だっけ。」

「そうそう。単にフライパン熱して卵割るだけってヤツ。料理する奴は誰もが一度は作る。…と思う。」

日本人感覚で外国人、しかもいいとこの坊ちゃまどころか王子のベルとそこそこの金持ちな遼は話が噛み合わない事がある。

「遼も?」

「初めて作ったフライパン使う料理は目玉焼きだったな。力加減の練習にも少しはなった。」

リンゴは勿論人間の腕すら砕く遼の握力。幾多の卵をダメにした過去がある。焦って取ったらグシャ、はよくある話だった。

「馬鹿力って便利なんだか不便なんだか。遼の寿司そこそこ美味しいし。…あれ?指輪は?」

「ろくでなしに送りつけたまま。着けたくねぇ。」

最早ここまで来ると意地。許したつもりは毛頭無い上に、名指しでも呼ばない。ニックネームすら。スクアーロがオフでもべったりしたくない程度には、怒りが収まっていない。無論、スクアーロは凹みっ放しで、鬱陶しさが上がっているとの専らの噂。

「バカ鮫好きだから許せないって事?」

「否定はしねぇ。」

手当てを終えて午睡に向かう遼をベルは見送った。

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