文句あんのか | ナノ
傲慢な王と冷酷な女帝


静かな攻防戦を繰り返す遼とザンザス。話は平行線のままで、ザンザスとてスクアーロの失態は認めているし、マフィアとしての付き合いがある事も理解している遼。

「…何をすれば、許してくれるんだぁ?」

長い沈黙を破ったのは元凶であるスクアーロ。一瞬で遼の纏う空気が変わり、スクアーロを見た。

「すれば?テメェ何様のつもりだよ。された方がどうするか、そりゃ俺の自由だろ?許す許さない以前の問題、小学生でも解るだろうよ。」

刃のように鋭い瞳には、怒りが目立つが様々な感情の込められた怒り。噴出を押さえられているのは、子供の存在だけだ。

「後始末はテメェでやれ、カス鮫。」

同族嫌悪に似た感情を抱くザンザスだから、遼の怒りがどこから根付いたのか理解できる。…それでも嫌いなものは嫌いなのだが。

「…遼。」

「十年前。お前は俺に言った事を忘れたらしいな。九年前。何百もの死体の上での誓いも。誰がいつ、お前の一番になりたいと言った?そこまで欲深く育ってねえんだよ。」

手に入れかけた、家庭。愛し愛され、一分一秒でも長く続いて欲しかった夢は実現前に砕かれた。叶わぬ夢ではないと教えた張本人が砕いた。また張本人を信じろと言うには、時間があまりにも無かった。共有する時間も少なかったが、確かにあった互いへの恋情。恋は人を虜にするが、その魔法は解けてしまうのだ。恋である限り。

「…弁解は、しねぇ。誘いに乗った俺がバカなだけだからなぁ。」

「それなら、答えは1つだろ。」

今生の別れ。次に会う日は他人。それ以外は無いと突き付ける、遼の目に迷いは無かった。ただ、怒りが燃え盛る。

「…今も昔もこの先も。遼だけを見ていたい。その目は俺を離さない。」

「すんませーんこいつ頭とうとう沸いたみたいなんですけど上司さーん。」

「昔っからだ。」

思いっきり毒気を抜かれた遼とザンザス。いやこの場で年代物っぽいポエムみたいなのは無いだろ。とお互いに顔を見合わせる。似たような考え方なので、行動パターンも大概同じ。盛大な溜め息を吐いた。遼が牙を剥けば、ザンザスは戦うつもりだった。

「KYにも程があるよな。死語かコレ?」

「なんだその略語は。」

「空気が読めない。略してKY。流行語。イケメンとかの親戚だ。」

「確かに流れは読まねえカス鮫だな。」

あーやっぱ?と先程までの空気が霧散し、ザンザスと井戸端会議並みにどうでもいい事を話し始めた。

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