文句あんのか | ナノ
清き水の音と


気が向いてヴァリアー本部でも、料理は暇つぶしにしていたのでスクアーロを華麗に無視して、遼は食事をしながら情報収集する。あくまでも、無視を貫こうとしているのだ。

「遼…イタリアに帰ろうぜぇ。」

何度もスクアーロが呟いているが、黙殺されている。視線すら合わない。カチカチと携帯をいじり、遼は電話をし始めた。

「久しぶりーエリート官僚様。佐々木遼だぜ。うん、依頼のお姉さん歌舞伎町に居る。ヤバいんじゃね?ハンネか源氏名使ってる。了解。じゃあな。」

電話を切ると食器を片付けに向かう。そしてコーヒー片手にパソコンを操作。スクアーロの存在は無視し続けられている。

「遼…。」

悲しげにマンションに響くスクアーロの声。しかし遼には届かない。拒絶はやる方もやられる方も辛い。心底嫌い抜けない、好いた男ならば尚更だ。憎めたらいいのに、と小さく溜め息を吐いてコーヒーを飲むと立ち上がり、シャツを脱ぎながら風呂場へと向かう。パソコンが破壊される前提でバックアップは全て取り、携帯も手放さない。

「仕方無く愛せる程器用じゃないの…」

風呂に入りながら、愛しげに腹部を撫でる遼。紡がれる歌は無意識に選んでいるので、聞き耳を立てていたスクアーロは凄まじく心中複雑で、どう打破するべきなのか悩んでいる。風呂から上がった遼は、白い肌に傷が浮かび上がっているが上気し、年齢相応の色香を備えていた。

「遼、イタリアに帰ろうぜぇ。もう、しねぇ。」

出掛ける用意を始めた遼に僅かながら希望を抱くスクアーロ。しかしパソコンの電源を切り、スクアーロを無視したまま遼は出掛けてしまった。

「久しぶり、出世したじゃん。チビも12になんのか?」

「よく覚えてるな。人生の先輩に相談とは遼も成長したじゃねぇか。」

「まぁ十年経って腹に子供抱えてるからな。んで警視総監殿、俺アルコールと煙草厳禁。」

「…結婚したのか?」

「スピード国際結婚。ま、それで相談してぇ。」

華やかな街で壮年の男性と歩き出す遼に、茫然自失のスクアーロ。何者だと聞けば、日本の警視総監。夜はまだ長い。

「ま、俺が帰ってきたのはこういうワケ。」

「イタリア人なぁ…。気持ちは解らなくも無いけど腹の子供に悪影響間違い無しだな。聞いてるんだぜ、腹にいても。しかも母親の気持ちは伝わる。」

「ちったぁ頭冷えたんだけどツラ見たらまた沸騰しそうなんだよな。」

公園の噴水前で缶コーヒー片手に、天下の警視総監と人生相談。

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