文句あんのか | ナノ
恐怖の中に美しさが


ガッゴォン!と遼の黄金?の足により屋上の扉が吹き飛んだ。

「飛距離上がったな。俺もしかしなくても進化中?その内死人出るかな。」

今度やってみよう余裕があったら。などと不穏極まりない考えを頭に、弁当を食べる。最初は何事かと生徒会の先輩方が訪れていたが遼の仕業と判るなり、引き下がるしかなかった。誰しも命は惜しいのだ。やんちゃの一言では片付けたくない遼の暴れ具合は青学名物扱い。

「やぁ、佐々木。」

「お?どーしたやまとん。テニス部レギュラーで飯食うって聞いたぞ?」

軽く手を挙げて挨拶をしてきた大和に遼は首を傾げて見上げた。

「もう食べた。今日はお願いに来たんだ。」

それに遼は軽く目を細め

「可愛い部員を殺すなってか?それとも選手生命とやらを絶つなってか?」

「佐々木は殺しはしてないだろう?それに無差別に殴ったりしていない。」

冷たい汗が背中を伝う大和は、遼を気に入っている。基本的に深い関わりを持たない割に、惹きつけられる何かを持つ。破壊的なカリスマ性、と呼ぶべきか。攻撃的な性格で力も強すぎる故に敬遠され、鋭く輝く目は畏怖を覚える。

「それじゃ、何だ。」

「…佐々木はテニスに興味はあるか?」

「ねぇ。ルールは法律だけで充分だ。」

身も蓋もない返答に大和はやっぱりな、と空を仰ぐ。雨が降りそうな曇天。遼ならば頂点を目指せる逸材だというのに、本人にやる気が無ければ意味が無い。

「佐々木に…一年の連中を頼みたいんだ。挫けそうになっていたり、絶望していたりした時の支えに。」

「俺は何でも屋じゃねぇ。情報屋紛いだ。断る。」

遼の声はハスキーなのに素っ気なさと冷徹さが先行して、恐ろしい。猫や天気以上に気紛れで、旋風を巻き起こして去って行く。そんなイメージを大和は持っている。

「ダメもとだったが…やっぱりか。」

「俺は万能じゃねぇよ。用はそんだけか。」

遼は弁当を片付けて立ち上がり、まだ僅かに目線の高い大和を見据えた。三白眼が強調される。

「あぁ…。」

「タイマンで面出した根性に免じて話は聞いてやったぞ。俺が何をしようがテメェの勝手だ。」

言い捨てて遼は屋上から立ち去った。見る者を恐怖のどん底に叩き落とす、不敗の女子生徒。力無く大和は膝を突いた。あんな目を一年がするのか、と。肝が据わりすぎだ。

「なんて…化け物だ…。」

顔立ちは整っているのに、眼光と雰囲気が恐怖以外の何物でもない。それ以来、大和は遼に関わらず卒業していった。

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