文句あんのか | ナノ
修理費もバカにならない


ジト目で遼はそれはもう見せびらかすように、酒を呷るザンザスを見ていた。

「遼ちゃん、飲んじゃダメだからね。」

「いーじゃねぇか一杯引っ掛けるぐれぇ。かなり我慢してんだぞ。」

唇を尖らせながら夕食を食べていく、遼の所作は優雅になっていた。意識しなければ元通りの品の無い食べ方だが。

「カスの忍耐力はその程度か。」

「そのカスにこないだシャンデリアブン投げられてマジギレしたのは、どこのどちら様でしたかねぇ。」

「スクアーロー!早く起きてー!止めらんないわよこの2人ー!」

怒りのボルテージ上昇中の2人。遼は口だけで笑い、ザンザスは眼光を鋭くしている。…日常茶飯事だ。大人気ないまま育った。

「ガキごとカッ消すぞ。」

「こないだも同じセリフでこの通りピンピンしてますがねぇ。有言実行出来てない30過ぎのオッサンがなぁに寝言言ってんだ。」

この2人が顔を合わせるとロクな事にならない。ザンザスが出て行けと言えば、遼は本気で帰国するのが解りきっている。スクアーロが泣こうが喚こうが、成人と共に父親から譲り受けたマンション経営で生きていくだろう。シングルマザーになる覚悟だ。凄まじくえげつなく、悪質で、底意地の悪い汚い手段だ。

「スクアーロー!」

「うるせぇ!」

見事に唱和し、ルッスにグラスが投げつけられるぐらい、思考回路と行動パターンが似ている。

「…カッ消す。」

「上等だぁ、あの世で嫁さん探させてやる。」

テーブルを担ぎ上げた遼と銃を構えたザンザス。一瞬の膠着。目が合った途端遼はテーブルを投げ、銃弾を避けながら手に持っていた食器を凄まじい勢いで投げていく攻防戦。

「んだようっせぇな…遼何やってんだぁぁ!?」

銃声と何かが壊れる音が響き渡る夕食。

「スクアーロは遼ちゃん、アタシはボスを押さえるから。」

「…努力はする。」

命懸けの作業だが、頭に血の上った遼はあっさり子供の事を忘れる。

「せーのっ!!」

ルッスはザンザスを羽交い締めにし、スクアーロは遼を抱き締めて反射的に顔を向けたと同時に口付ける。タイミングがズレると、誰かが死ぬ。

「んっ…おはよースペルビ。」

「起き抜けに心臓に悪い事しないでくれぇ…。腹の子に障るだろぉ。」

「軽い運動だろ?これぐらい。床抉ったけど。」

不穏だが傷一つ無い遼は笑って、スクアーロの頬に触れる。ルッスは必死になってザンザスを説得しているのだった。

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