文句あんのか | ナノ
華やかなお茶会


暇つぶしに、遼はよくダーツをしていたが今はナイフを投げている。扉に付けたダーツボードはやる度にボロボロだ。

「ひっ!?」

「あ、悪いユリちゃん。ノックぐらいしろよ。」

「ミーはフランですー。何回訂正したらいいんですかー?」

扉を開けたフランの顔スレスレに、ナイフが飛んできたのだ。恨めしげにフランはワザと掠めさせた遼を見る。ヴァリアーに勧誘されながら入らなかった、生きた伝説。

「酔った勢いで決めたし。サノとかタンタンが何回訂正させようとした事か。実力でも出来なかったんだぜ?スペルビは前受験生の敵って呼んでた。」

「…拒否権ないんですねーおこりんぼボスと似てますー。」

「サノとスペルビが聞いたら死ぬぞ。ついでに派手な喧嘩は俺も好きだからな、そんときゃ骨盤粉砕してやるよ。」

ニヤリと笑う人妻兼妊婦に見えない遼。眼光は変わらず鋭いままだが、かつてのように男と断定ができない中性的な美貌だ。

「痛いんですよー遼さんの蹴りも拳もー。」

「そりゃそうだ。んで、ルッス辺りがまたマタニティ向けのかわいらしー洋服だの、性別すら判ってねえ腹の子の服でも買ってきて品評会か?」

唇にナイフを当て、もしそうなら解っているだろうな?と言わんばかりの態度にフランは戦慄した。気紛れで、荒れ狂うかと思えば穏やかで身を切る鋭さ。風のようだ。

「お茶のお誘いでーす。ベルセンパイご指名なんですー。」

「暇さえありゃ王子は遊びたがるからな。食後の軽い運動で終わらねえし。」

ナイフを片付けて部屋から出る遼は、何年経っても動きやすい服で動き回る。

「ミーを投げるのは止めて下さーい。死にそうになりまーす。」

「普通投げるモン無きゃ投げるだろ。」

「片手で投げる事が普通じゃありませーん。」

「ヴァリアーで普通を求めようなんて夢見がちじゃねぇか?」

いつものお茶会兼戦場、庭に向かう2人。スクアーロ夫人とは呼ばれない遼を見上げるフラン。

「何食べたらそんなバカでかくなるんですかー?」

「魚の骨とかか?日本酒には合うんだけど随分飲んでねえなぁ。」

「旦那さんの捨て身の努力ですよー?」

「クソガエル遅い!」

ナイフが何本もフラン目掛けて襲い掛かるが、しれっと遼に向けられたナイフは叩き落としている。

「今日のお菓子は何かな?王子。」

「遼の好きなフォンダンショコラ。」

フランとルッスは知っているが、スクアーロが死んだらベルは遼を攫う算段を立てている。

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