文句あんのか | ナノ
勝負だったっけ?
遼の中では「人の一番」を決めたくないという願いがあった。スポーツや学力ではなく、感情での一番。しかし今は、天秤が揺れ動いていた。スクアーロを意識してしまったからだ。
「…もうちょい賢く育ちたかった…。」
女である事は本当だが、異性として見た事が無かったのだ。見れば見るほど違いが明るみになるが、実力で言えば互角以上に戦えてしまう。通常ある筈の男女の差を埋めてしまう、驚異的な力。それでも自分を欲しがるスクアーロが解らない遼。怪力が遺伝だと言うのなら誰かが言い切っていただろうし、調べたのだから出て来る筈だ。
「…結局どっちだ?」
スクアーロに対する悩みではなく、好きなのかそうではないのか。それを真っ先に考えなきゃ始まらないと自問自答を繰り返す。ある意味日照りでもあったから難問だ。戦っては負かし、傷だらけになる事もザラにあった。怒りに身を任せ手を赤く染めた。女だろうと手は抜かなかった。
「…うじうじ悩むのはガラじゃねぇな。」
嫌いではない。うるさいとは思っても、1人で部屋にいるよりはずっと楽。なら一緒に居てもいい。縛り付けるのは大嫌いだし、支配されたくない事を知っているスクアーロなら理解してくれるだろう。長生きしてるんだし。と年齢相応の押し付けがましい考えで結論を出した。晴れた訳ではないが、望むなら近付く。拒まれるなら離れる。恋愛に縁がなかったのだから、傷付きたくないと守りに入るしか思いつかない。
「…会えば、解る。」
必要なのか、そうではないのか。血の臭いがするスクアーロに居場所は求めていいのか。携帯を見て、遼は自宅に歩き出した。明日になれば全て解決するだろうと、朝の献立を考えつつ裏路地を出て顔についた血を拭う。空は暗く、ネオンで星は見えない。曇りなのかも判らない。
「明日は、ガッコ行くかなぁ…。」
悠々と街を抜け、並盛に足を踏み入れた途端スクアーロに突撃されるまで、後二時間。どこかで会えて安堵していた事に気付くのには…まだまだ時間がかかりそうだ。
「遼!何だその血!」
「あれ?まだ顔に返り血付いてたか?今日無傷とか期待すんなよ。腕掠っただけだから。」
「掠り傷に見えねぇ!」
「ハイハイ、夜更けに騒がない。変なのが出るぞヒバキョンとか。」
その後、手当をされて動揺している遼だった。今まで無かった訳ではない。ただ傷だらけでも好きなのか?と思ってしまっている時点で遼の負けは決まっていたのだ。
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