文句あんのか | ナノ
私服はメンズ


関東最強の佐々木遼を知る人は語る。猛獣のように荒々しく情け容赦の無い、目を見ただけで汗が噴き出す決して敵にしてはいけないモノだと。

「何や兄ちゃん俺中学生やで?金なんかあるわけないやん。」

遼は道を歩いていて、忍足が強請りに遭っている所に出くわした。気丈に振る舞う忍足とガラの悪い三人組のありがちなパターン。氷帝は金持ちの多い学校だから、更に確率は上がる。

「氷帝の坊ちゃんが関西から遥々来てんだろ?無いわけねぇじゃん。」

「あらへん!誰か呼ぶで!そこの兄ちゃんとか!」

「楽しそうな事やってんなぁ?こないだブン投げた以来じゃねぇか。」

じゃり、と遼は足音を立てて4人に近付く。3人はざぁぁぁっと顔を青ざめさせた。

「…佐々木遼…!」

「名前まで覚えたのか。ちったぁ賢くなったか?」

口だけで笑う遼に恐怖を禁じ得ない4人。敵意丸出しに睨んでしまった以上、後戻りは出来なかった。

「ここでお礼してやらぁ!」

男の1人が遼にナイフで切りかかり、遼の右腕を掠った。

「あぶねぇなぁ、中学生の目の前で光モンかよ。」

その後は一方的な暴力の嵐が吹き荒れ、忍足は動く事も目を逸らす事も出来ないまま、遼を見つめていた。

「ホント、バカだな。俺仕留めたかったらタンクでも持って来いよ。」

今日は出血少量、と忍足に目を向けた。身動きが取れない忍足。遼は苦笑して

「俺は強請りなんぞしねーから安心しろ。気紛れでやってんだから。」

「いや、怪我しとるやん…佐々木遼、やったか?」

忍足は震えながら遼の腕を見る。流石に目を見る度胸は無かった。

「こんなもん膝擦りむいたレベルだ。おぅ、佐々木遼だ。青学一年。ちなみに女だ。」

「一年の女!?いやいや笑えんで!」

「どーしょーもねぇだろ無いもんは無い。」

「…ホンマ?」

「クドい。血塗れの入学式でちったぁ話題になった筈なんだけどな。ああいうバカははいて捨てるぐれぇいっから気を付けろよ?忍足侑士。」

「…何で、知っとんの?」

「企業秘密だ。じゃーな、おっしー。その内また会うだろうけど。」

背を向けた遼に忍足は思わず声を上げた。

「待ちや!…その、怪我の手当てぐらいさせてくれへんか…?」

「それが対価なら、構わねえぞ。」

そして忍足の家に行き、手当ての為に服を脱いだ遼に忍足は本当に女だったと固まってしまった。都合良く忍足は、近所で怪我をしたら、来て話を聞きたいと約束を取り付けた。しょっちゅう怪我をする遼は入り浸るようになり、泊まるようになるのは秋だった。

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