文句あんのか | ナノ
魅了された鮫


スクアーロ視点。

初対面での印象は最悪。しかし遼は関東最強と謳われる女だった。誰と戦っても勝ち続けた猛者。誰よりも戦う姿が美しい俺の惚れた女。ただ、強すぎるのとニブいのが欠点。あの格好で寝てる普通の女は間違いなく襲うだろうに、警戒を解かない猛獣のような遼はボスみてぇにポイポイ投げつける。ボスよりタチが悪いな。人間投げんだから。縄張りと呼ぶ関東をあっちこっち行って、何かから逃げてるようにも見える。勝ったら嫁に来い、って何度も戦って負けてますます欲しくなる。悪循環だ。遼はまだ強くなってる。

「…惚れた女1人、モノに出来ねぇかぁ。」

遠い日本で今日も暴れているだろう遼を思い、空を見上げた。甘え下手で、かなりの意地っ張り。激痛を伴う傷にも涙すら浮かべないぐらい。俺も甘やかすのが下手だと解ったけどな。惚れた欲目か、それもいいとすら考えちまう。遼は好きだと言って信じるだろうか?変な意味に取りそうだ。日本語はこれだから厄介に思える。運命なんざ笑い飛ばしてぶっ飛ばす。一生モンの片思いで終わらせてたまるか。

「血の臭い、か。」

血染めの赤いカーペットなら俺と遼に似合う。数え切れない死体の上で、死ぬまで離さない誓いを立てるのもいい。首輪の似合わない遼には、俺の証を刻めばいいだけだ。何度でも言い続けよう。後にも先にも、ここまで遼を愛した男は俺だけだ。俺だけにする。どんな手を使っても、振り向かせてみせる。

「鮫は貪欲で獰猛なもんだぁ。覚悟しろよ、遼。食い尽くしてやる。」

貪り尽くして負けを認めるまで諦めねぇ。剣帝を倒した俺の誇りに懸けて手に入れる。ただの女に入れ込める程暇じゃねぇ。遼に付けられた傷すら愛しい。

「後は任せたぞぉ!」

幸いこれから日本での任務だ。会いに行ける。孤高にして最強の女、唯一誘いに頷かなかった最愛の女。その目に俺を映し、声を聞かせてくれるだけでは満足出来ない。

「遼、生き続ける限り俺は忘れねぇ。」

恐怖と共に刻まれたその他大勢の記憶から消えても、忘れねぇ。愛した女を忘れるなんて器用な真似出来ねぇからな。任務をさっさと終わらせて、遼の飯を食って寝る。それが当たり前になるまで居座る。傷をなぞれば遼の姿が目に浮かぶ。血塗れになりながら目を輝かせる、最も美しい姿。後数年もすれば、確実に女らしい体になる。それまでに心だけでも奪いたい。あの美しさに気付かれる前に手に入れなければ、届かなくなるだろう。

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