文句あんのか | ナノ
学生なんです


ベッドに転がって教科書を読む遼だが、現在はスクアーロが休みの場合近所迷惑甚だしい自宅だ。

「ゔお゙ぉぉい!帰ったぞぉ!」

瞬間的に残り少ないベルから貰ったナイフを喉目掛けて投げつける遼。毎度の事なのだがバイオレンスすぎる。

「何回気配で判るって言えば解るんだよお粗末な頭だな。」

「寝てたのかぁ?」

「午前2時って普通の学生は寝てるだろうよ。教科書読んでたけどな。」

再び教科書を開く遼。ナイフは寝たまま投げつけたのだ。スクアーロは指でナイフを受け止めている。

「…風呂借りるなぁ。」

「んー。」

スクアーロの風呂は長い。ドライヤーの時間を含めて20分で全て終わらせる遼にしてみれば、だが。スクアーロが上がると、遼は部屋着のまま寝息を立てていた。無防備に見えても、命を奪う事は難しい。腕を切り落とすにも、刃を向ければ反応するだろう。

「…お休み。」

唇を重ね、スクアーロは持ってきたソファに寝そべった。そして自爆していた。恥ずかしすぎる、と。幾ら惚れた女でも、ここまで手が出せないなんて誰にも言えない。

「…強くなりすぎだぁ。」

血筋の問題で裏に近い者ではなかった遼。類い希な怪力とセンスで関東最強と謳われ、戦う姿が最も美しいとスクアーロは考える。そっと触れ合った唇は、柔らかく温かい人間のもの。支配するには困難を極めるがそれだけの価値を秘めた人材。そして圧倒的な強さで魅了してやまない、遼が欲しいと願う者は、それ以上の強さを必須とする。

「…受験生の敵。独り言多いぞ。」

「あ゙?…悪い。」

ブツブツと呟いていたスクアーロは、顔を赤くしたまま遼の大きなベッドに潜り込んだ。

「…暑いんだけど。」

「たまにはベッドで寝かせてくれぇ。」

やれやれ、と首を竦めた遼は本格的に眠る態勢に入った。スクアーロもその様子を見届けてから目を閉じ、何年かければ勝てるだろうかと思案しながら寝ていたのだった。

「…遼、もしかしなくてもキス分かってたのかぁ?」

「すげー今更だな。残念ながらファーストキスは女にやられたけどよ。トーストになんか乗せるか?」

「そうかぁ…。ベーコン乗せてくれぇ。」

スクアーロのいる朝は、やたらと平和に見えるのであった。

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