文句あんのか | ナノ
不敗神話更新中
神出鬼没、気紛れな台風のような遼だが、骸達にはよく発見される。
「骸様。佐々木さんを見つけました。」
クロームは歩道橋を歩く遼をじっと見据え、呟くと骸がやって来た。
「会いたかったですよ愛しの遼さん。」
「人違いです。」
即答した遼だが、間違うような地味な人ではない。夕焼けに照らされたその顔は端正で、十中八九男と間違われる。ハスキーボイスや腕などに残る傷痕、間違えられたらその方がおかしいくらいだ。
「クフフ、嘘が下手ですね遼さん。僕があなたを間違える筈がありません。」
「…まぁ、吐くならもうちょい上等な嘘にするけどなぁ。ムクドリよぉ、俺つけ回して楽しいか?」
髪を掻き上げながら、遼は呆れたように骸を見る。鬱陶しいとは思いつつ、刃を向けられなければ牙を剥かない大人しい猛獣。
「遼さんの全てを手に入れる為なら、何だってしてみせます。」
「全て、なぁ。馬鹿力なら喜んで進呈するぞ。トン単位で投げられそうだし携帯バキバキ壊すからな。」
誇張ではない事実。嫌ってはいないが、不便だと考えている。完全に制御しきるには、まだ時間がかかるようだ。
「創造と破壊は二律背反し共にあるものです。」
「にりつあいはん?何語だそれ。」
「日本語です!もう少し勉強しましょう。手取り足取り教えますから。」
「使わねえ情報は要らねえから。」
ふわりと歩道橋から飛び降り、骸達を見ずに歩き出した遼。ヴァリアー相手に死闘を繰り返した遼だからこそ、躊躇わずに出来る。
「綺麗…。」
「美しい瞳の女性でしょう?」
闇に輝く刃の如き瞳に、しなやかな肉体。畏怖や憧憬を抱く者は数多く、何者にも膝をつかない関東最強と謳われる遼、とクロームに語る骸。しかし些か夢も混じっている。自分の非は認めるぐらいするのだ。心底悪いとは思わなくても。
「受験生の敵ってフカヒレ食うかな。」
今度通販頼んどこー。とふらふら街を歩いては相変わらず、喧嘩や殺し合いを繰り返す。バイオレンスな日常こそ遼の生きる賢くない道なのだ。静かに生きたいとは考えなくなった。
「やり残した事あったら出直せよー?」
今日も今日とて、夜空に自販機や公衆電話が舞い上がるのだった。
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