文句あんのか | ナノ
周りが賑やかになる人


トントン、と軽快な包丁の音が手塚家に響く。彩菜がインフルエンザでダウンした為、遼が家事をしているのだ。

「おはようございま…す。何故佐々木が居る。平日だろう。」

「おはようみっちゃんかっちゃん。かっちゃんに頼まれてさ。かなりタダ飯食ってるし、かっちゃんには柔道習うからさ、あやちゃん復活するまで家政婦。」

はい朝飯これ、と出されたのは手塚家では珍しい洋食だ。怪力を生かし、時間短縮させまくった。

「まるで遼が嫁のようじゃのぅ。」

「あはは、旦那より強くてデカい嫁さんとかみっちゃん嫌がるって。つーかさ、どこまで掃除していいんだ?みっちゃんにも見られたくないあれこれありそうじゃね?」

思いっきりむせた手塚。にやぁ、と遼は笑う。

「かっちゃん、抜き打ち検査したほうがいいんじゃねぇ?ありがちなパターンなら知ってるぞ。何か飾ってある裏にとか。」

「遼さん意地悪だな。でも国光の部屋には遼さんの写真が一枚あったなぁ。」

ひきっ、と遼の顔がひきつった。

「…かっちゃん、肖像権の侵害って著名人限定だっけ?」

「盗撮なら適用されるぞ。」

冷たい目で国一と遼から見られる手塚。スープを飲み込み、口を開く。

「罰ゲームの制服交換の時に撮られた写真だ。」

「かっちゃん、そーゆーのみっちゃんってとっとく主義?」

「掃除の際にはかなり捨てとるぞ。」

「遼さん、解ってあげようよ。国光の憧れなんだから。」

「父さん…。」

「かっちゃん、はるるん…俺的にみっちゃんの教育方針間違ったんじゃね?はっきり言って俺世間様に胸張って生きてねぇぞ?」

「遼ぐらいなら多少やんちゃな位が丁度良いぞ。」

「遼さんは女の子だしね、強くていいよ。」

限度があるだろ、と珍しく賑やかな朝食。手塚には居辛すぎる。

「弁当コレ。かっちゃんお気に入り超和風弁当。晩飯も和食でいいか?刺身に出来そうな魚があったしカルパッチョにしてもいーけどよ。」

「遼は食べたいものは無いのか?」

「うん。昨日好物作って満足してっから。リクエストあんなら出来る範囲でやってやるよ。栄養考えねぇから。」

「じゃあ遼さんの自信作がいいな。」

「了解。さ、みっちゃんガッコ遅れんぞー。」

颯爽と学校へ向かう手塚と遼を見ながら国晴は呟く。

「…遼さん、国光の奥さんになってくれないかな。」

「無駄の無い動きは捨てがたい。」

「お父さん、裏工作しませんか?国光の事だから絶対意地を張りますよ。」

「不意打ちもまた戦術、試してみるか。」

遼を国光の嫁に。…2人の意志を全く考えず親子は結託した。

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