文句あんのか | ナノ
外国と言うだけで


時差ボケ対策、要は寝とけば万事オッケー!と思っていた遼だが、イタリアに着いた頃には夜だった。

「…幻想持ちすぎたのか俺って。」

テレビでしか見なかったイタリアへの先入観をあっさり砕かれ、更にこのままヴァリアー本部に直行させられるというのだから楽しむ暇すら無い。

「遼って日本から出た事無いの?」

「王子…俺をなんだと思ってたんだよ。あるわきゃねぇだろ。小学生から喧嘩三昧で関東の情報集めるコネ作りに忙しかったんだから無理。」

あまりにも小学生らしくない小学生からマトモな女子中学生になれる筈も無く、アウトロー人生を爆走しているのだ。そもそも遼にとっての幸福は、人と笑える事。悪戯も最後には種明かしをして、笑い話にする力を持っている。見た目と経歴が怖いだけで、若くして玉座に君臨するトリックスターなのだ。

「夜景もロマンチックなんだけどごめんなさいね、本部からは見えないの。」

「ルッス…俺にロマンチックとか理解を求めないでくれ。キレイなのは解らなくもないけど。」

「遼ちゃんは若いものねぇ〜。やっぱり遊びたい盛りかしらん?」

「王子とは遊ばねえ。死にそうになるから。」

そもそも遊びの基準が違いすぎるのだ。遼はキャッチボールで相手を吹っ飛ばすが、悪気はない。本気で投げろと言われたから投げたんだけど悪かった?と真顔で聞くタイプだ。山本が被害者になったが、佐々木肩強いんだな!野球部入って楽しくやろうぜ!と無邪気と言うか周りを全くちっとも考えない。性別の問題で救われた野球部員達。遼の人並みはずれた体力に自信喪失間違い無し、の危機から逃げられたのだ。

「えーオレ遼と遊びたい。負けっぱなしだし。」

「腕砕いても負けを認めない非常識と何回もやり合えるか!」

「遼、俺は何度でも挑むぞぉ!嫁にするまで!」

「…俺まだガキンチョなんだけど解ってんのか受験生の敵…。」

誰かを媒介にした骸も、隙あらば口説きにかかる。それが大の苦手なのだ。

「ゴメンルッス、俺洋服どうしたらいいんだ?」

「アタシが選び抜いた遼ちゃん専用がちゃんとあるわよ。」

ザンザスと身長は同じだが体格が比較すると華奢な遼は、到着してからザンザスと否応無しに酒盛りさせられ、現金な事にビバイタリア!などと思っていた。未成年としてすら見られない悲しい現実から逃避。美味い酒が分かる時点で色々間違っている。

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