文句あんのか | ナノ
これでも命懸け


トン単位ではないだろうかと思うような、崩れ落ちた壁をどっこいせー、とやる気のない掛け声で持ち上げて放り投げた遼は傷だらけでディーノに目を向けて声をかけた。

「おーい高級車。生きてっかー?」

「化け物…」

ベーゴマ攻撃や殴られてひしゃげた腕をだらりとさせて、満身創痍のディーノは立ち上がるのも一苦労、と息切れさせながらヨロヨロと立ち上がった。

「あ、生きてた。ロバさーん、高級車頼むな。」

「…ボスが、負けた…。」

ロマーリオが呆然と呟きながら、首の痣をさする遼を見ていた。

「高級車さ、もうちょい急所狙う練習した方がいいんじゃね?初動は速いけど後が読みやすいし。」

「遼ぐらいだ…。」

後はリボーン。肉体的に恵まれている遼は、ディーノとさして手足の長さが変わらない。だから予測が簡単に出来るのだ。

「危うく首ぐきってなるとこだったぞ。」

とっさに鞭を引きちぎってやり過ごした遼も遼だが、関東最強どころか世界征服も夢のまた夢ではない。

「んでもって高級車さ、鞭切られる事考えた?王子とやったらみじん切りにされんぞ。近距離考えた方がいいんじゃね?」

スクアーロや笹川など、即座に懐へ入り込み、間合いを詰められる逸材達にしょっちゅう戦いを挑まれる遼は殺人ベーゴマの腕がかなり上がっている。ちなみにスクアーロからは勝ったら嫁になれとまで言われる。かなり嬉しくない求婚のされ方だ。骸もその節があり口説かれている。怪力に自分の能力を兼ね備えた、真の最強を作り出したいらしいが…遼は歴とした女子中学生なので相手にすらしていない。

「…なぁ遼。何が遼を強くするんだ?」

「へ?えーとうーんとキレると見境なく投げんのは小学生からでレベルアップしてったのとやっぱ命は惜しいからな。命がけってここ最近だけど。オヤジは意地でも死ぬなって笑ってたしなー。」

遼は無自覚だが、父親の願いを叶えたかった。1人でも立って、泥水を啜ってでも生き抜く事に執着出来る人間になりたかった父親の願い。かなり強くなりすぎたが、生への執着は大したものなのだ。

「…何となく、解った気がする。本気で強いんだな…遼の親父さん。」

「いや素晴らしい勘違いしてっけどオヤジ表の人間だぞ一応。俺みてぇにどっぷり浸かって味しみてねぇから。浅漬けぐれぇ。」

口を開こうとしたディーノだが、意識を失いコンクリートに頭をぶつけていた。遼の父親は、精神的に強いと言いたかったのだ。

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