文句あんのか | ナノ
偶然から芽生える


行きつけのアクセサリー屋に新製品が入荷した、との情報を入手し、今日も今日とて似合うピアスを探し求める遼。あれこれ試しては持ち合わせの服に似合わないだの、可愛すぎるだのと批評しつくして深い溜め息を吐いた。

「俺の理想ってこんな高かったか?」

諦めて帰ろう、と駅に向かった遼だが、思いっきり少年にぶつかってしまった。少女マンガか?と思いつつも見事に転んだ少年を見て手を差し伸べる。

「悪いな、大丈夫か?」

「せ、拙者は全くの無傷であります!」

こいつも外国人かよ、と内心悪態をついて少年を立ち上がらせる。片腕で充分なのだ。

「では、拙者はこれにて失礼致す!」

「前方注意しろよ〜。」

ひらひらと手を振り、歩き出した遼の靴に堅い感触。見れば、真っ黒な指輪でエンブレムが刻まれている高そうな代物だ。

「あ、何かかっけぇ。」

左手の中指に迷わず嵌めて遼は感動していた。男にしては細いが、節くれだった指に入る指輪は珍しい上にデザインもいい、と。しかし一応紛失届を出されていると面倒なので、抜こうとした。

「…最寄りの教会で幾ら払えば呪われた装備って取れたっけ。」

ATMで済むならもっと楽なんだけど無理そうだな、と歩き出した遼だが、抜けない指輪に対する興味は無かった。似合うしいいか、と素晴らしく軽いノリだ。

「今日の収穫は指輪だな。いやー運がいいんだか悪いんだか。」

血塗れになって命を狙ってきたマフィア関係者の屍の中、遼は楽しげに夕日に照らされた指輪を見つめ歩き出した。

「佐々木遼!」

「んぁ?…ゴメン、誰だオッサン。」

家光が息を切らせて遼に声をかけた。気が高ぶった名残で、遼の目は鋭さと攻撃性を増している。

「あぁ、沢田家光。ツナの父親だ。」

「へーぇ。あんだけ調べて出て来なかったマグロの親父さんか。まぁ宜しくしといて。こーやって結構散らかしてっから。」

「関東最強…必要なら殺しもする、マフィアも恐れるフリーの殺し屋か。」

「裏の人間殺せばでかいのが騒ぐ、普通じゃね?」

だらりと腕を下ろし、反応に備える遼。相手が何を使うのか知らないからだ。

「その指輪は…」

「拾って着けたら外れなくなってさ。外し方知ってっか?ハニーちゃん。」

「…呼び方はともかく、それは夜空のボンゴレリングと言う。ボスが不在、または行動出来ない時に代理として命令権を持つ、誰よりも強い者にしか与えられない。」

「要らねえんだけど心の底から。」

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