文句あんのか | ナノ
恐ろしいクラスメート



「あ?何か用か?みっちゃん。」

佐々木は女だ。だが俺よりも視点がかなり高い。手足も長い上に噂に疎い俺すら、自販機を投げると聞く。

「…もう少し学校に来ないのか。」

「来て意味があんのか。つまんねえ授業聞いて適当にやっときゃいいとかぬかすなら安心しろ。腕は狙わねえ。」

残虐な光を湛えた目は、恐怖を覚える。腕を痛めた記憶の新しい俺には…とても恐ろしい宣告だ。

「…」

「図星って奴か。俺は帰るぜ。悔しけりゃ殴りかかる度胸付けてこい。全力で叩き潰してやるよ。」

ひらりと身を翻し、生徒が怯えて道を開ける。誰もが知りながら何も言えない、最強にして最凶の超問題児佐々木遼。

「佐々木!」

「あ?」

振り返った佐々木は、真っ直ぐに俺を射抜く。

「…明日も、待っている。」

「期待すんだけ損だぜ?青学テニス部の柱様。」

にやぁ、と笑って佐々木は立ち去った。鳥肌が立ち、手が冷える。何度見ても恐ろしい佐々木の笑み。

「一週間振りに来たと思えば通算7回目屋上のドアを蹴破り、平然と食事をして授業は適当に受けて早々に帰ったか…。」

乾が着替えながら呟いた。

「佐々木さんマジ馬鹿力だもんね。自販機ブン投げるとこ見ちゃったよん。」

ほら写メ!と菊丸が見せびらかす。あの体で自販機を持ち上げて投げる…スポーツなら充分に生かせるのだろう。

「その辺の不良より強いんじゃない?」

「…投げられたらしいよ。」

不二が顔をひきつらせていると河村が苦笑した。

「自販機も満タンならば800キロを超える…化け物だな。」

生々しい数字を出され、佐々木の腕を掴んだ手を見てしまった。細いとは思わなかったが、女の腕で持ち上げて投げる…。

「とりあえず敵にはしちゃいけない人だよね。」

「本気で殴られたら頭蓋骨粉砕だよ。」

生きた伝説、佐々木。あいつは、何をしたいんだ。

「早く着替えろ。」

今は集中するしか無い。佐々木の目的が何なのか、聞けばいいだけの事だ。明日か、明後日か、また来週になるか…佐々木次第だ。家に来ては魚を捌き、母の手伝いをする姿にも恐怖を覚える。いつ、あの包丁が俺を、家族を殺すのかと…考えるだに恐ろしい。傷を適当に…いやぞんざいに手当てとは名ばかりに包帯や湿布で終わらせる。関わらなければ一生縁のない、暴力の化身。しかし、目を引かれてしまう。佐々木の行く末には、何があるのだろうか?

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