文句あんのか | ナノ
上には上がいる


ポチッ、と携帯の通話ボタンを押して遼は行きつけの店に連絡した。

「一徹さーん、俺。佐々木だけどちらし寿司ヨロシク。今から行くから。」

薄手のシャツ、腰に春ジャケットを巻いて颯爽と歩き回る遼は極めて自由すぎる学生らしさの欠片もない、その辺りに居そうな兄ちゃんのようなファッションだが目つきの悪さと背の高さが際だつ。マフィアにまで目を付けられる異常な強さと、平和に生きた人ならチラリと見ただけで嫌な汗が流れる存在感と威圧感。無自覚なのが尚更性質が悪くて手に負えない。

「こんちわー一徹さん。」

「らっしゃい遼!今日はマグロのいいヤツが入ってるぞ!」

「そりゃ楽しみだな。」

「遼、王子の横に座りなよ。」

「また日本に来てたんだな、王子。」

軽く手を挙げながらベルの隣に座る遼。関東最強と切り裂き王子、知る者が見れば充分怖く見えるペアだ。しかし、黙々と寿司を食べる2人。

「王子エンガワ。」

「俺中トロ。あ、後でカマ使わないならくれよ。」

「あぁ、お得意様だしやるよ。美味く食べてくれればおっちゃんとマグロは満足さ!」

暫し寿司を食べながらマグロ料理の話をしている2人に、ベルは口を挟まず興味を示さなかった。

「王子さ、仕事やったのかよ?」

「当たり前。王子は失敗しないし。」

「あー納得。血の臭いは気のせいじゃなかったか。俺もちょっと臭うけど気にしないでくれよ。」

「遼もイタリア来たらいいじゃん。毎日楽しく遊べるし。」

「イタリア語話せねぇってば。勉強しろってか?」

ガラリ、と扉が開きマーモンが現れるが遼とベルは湯飲みを片手に話を続けている。

「王子は力任せに自販機投げないし。」

「しゃーねーだろ手近に投げるもんねーならあるもんで適当に。変な犯罪者狩るならさ。」

「王子のナイフ使ってないの?使えないとかー?」

「一回使ってみたら手入れが分かんなくてさ。包丁と同じでいいのか?」

「ベル。ボスが呼んでるよ。」

ふわり、と遼の頭に座るマーモン。居心地がいいらしく、マーモンの中では定位置だ。

「もんたん、俺の髪一応セットしてんだけど乱して楽しいか?」

「うしし、遼もマーモンには甘いー。今日は王子が払ってあげる。だから今度遊ぶ約束。」

「出来ればワイヤーは無しの方向で。貧血になっからマジで。」

「そんなの王子が決める事でしょ。じゃーね、遼。マーモン行くぞー。」

「ムム、遼とはあんまり話せないね。金払いいいのにな。」

カードで支払い、颯爽と店を出る2人を見送り、遼は包丁の手入れを山本剛に習うのだった。

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