文句あんのか | ナノ
手塚家に訪問


「あやちゃん魚下拵え出来たぞー。」

「ありがとう遼さん。本当に助かるわ。」

手塚の祖父に会いたい、と駄々をこねた遼の祖父を引き連れて手塚家にやって来た遼だったが。2人は昔話に花を咲かせ彩菜の手伝いをしていた。

「…何故佐々木がここにいる?」

「お?おかえりみっちゃん。爺さんがかっちゃんに会いたいって案内してやったんだ。」

国一すらにも愛称を付けるのだから怖いもの知らずと言うか…恐怖そのものではないかと手塚は眩暈を覚えた。

「今日は遼さんが手伝ってくれて助かるわ。本当にお料理上手ね。」

「オヤジがド下手くそだからなぁ。爺さんもサッパリだしそもそも一緒に住んでねぇ。あやちゃんガス消しといてー。」

「あらあら、吹いちゃうところだったわね。」

「何で馴染んでるんですか母さん。佐々木の悪評は知っているでしょう。」

手塚の言葉に彩菜は首を傾げて

「国光。評判だけで人を決めつけてはいけないわ。遼さんはそれだけでは無いでしょう?」

「あやちゃん俺そんな大層な人間じゃねぇよ。ゴマこんなもん?」

「えぇ。ありがとう。お茶を淹れるからゆっくりしてちょうだい。」

「うん、後は魚煮て和えるだけだからヨロシク。」

腕を捲っていた遼は元に戻し窓際の床に胡座で座る。

「佐々木…」

「あんだ?みっちゃん。」

見上げる遼は珍しい。しかし眼光は敵意が無くとも鋭く、女とは思えない。

「たまに、来るのか?」

「多分な。爺さん方向オンチだから案内してやる事もあるだろうよ。爺さんとかっちゃんは石器時代からの知り合いだしな。」

爺さんも柔道指南をしていたと事も無げに呟く遼。強さの所以はそこか?と聞きたいが怪力は明らかに違うだろう。

「お前だけは、敵にしたくないものだな。」

「中学生相手に札は使わねえから安心しろ。力ずくで沈める。」

「だから、したくない。」

「殺さねえっつってんのになー。つーかみっちゃん包帯どこ?腹刺されたからまた出血してるみてぇ。」

それに顔色を変えた手塚は慌てて包帯と消毒薬を持ってきた。

「サンキュ。内臓には達してないらしいから。」

ぺろん、と腹をめくり綺麗に割れた腹筋に巻かれた血の滲む包帯を取り、慣れたように消毒して巻き直す。

「こんなもんか。なぁみっちゃん、こんな色気ゼロの俺見て楽しいか?」

「…楽しくは無いが…。てっきり無傷で勝ち続けているものかと。」

それに肩を震わせて笑う遼が珍しい。こんなにも表情豊かだったのだと。

「みっちゃん、俺も人間だし怪我するぜ?無傷の喧嘩なんてねぇよ。」

「…女だろう。」

「みっちゃーん?女らしい俺とか怖くねえか?」

ふっと脳裏に過ぎった映像に手塚は眉間の皺を深くした。似合わないにも程がある。

「失言だった。」

「だろ。俺もイヤだ。」

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