文句あんのか | ナノ
手塚を応援する人


何故わざわざ氷帝に来たのかと言うと、制服を借りるのもあるが、跡部達がテニスに励むからだ。後輩指導も怠らない。来ない面子は来ない。特に今日はバレンタインなのだから。

「顔も赤くした。目薬も差した。まーくんアドバイス有難う!」

遼、いっきまーす!と榊に笑いかけ、勢いよくチョコ片手にテニスコートへ突っ走る。多少息を乱した方がそれっぽい、と仁王にアドバイスされた事を忠実に再現している。

「あ、あの…あ、跡部先輩…こ、これ…。」

全力疾走したので、文句なしの状態。跡部は思いっきり固まって遼を凝視している。潤んだ目、紅潮した顔に荒い吐息は明らかにそっち系にしか見えない。

「お渡ししたいだけなんです!俺の事知らないままでいいんです!そ、それじゃ失礼します!」

渡すだけ渡して遼は脱兎のごとく逃げた。内心はガッツポーズしているが、音楽準備室に戻るまでの辛抱と笑いも我慢している。

「…跡部、色んな意味で終わってもうたな…。」

「野郎のチョコなんざ要るか!大体誰だあいつ。」

ラッピングを無造作に破って、メッセージカードを見た跡部はもの凄く倒れたくなった。
佐々木遼からハッピーバレンタイン
と丸文字で書かれていればそうもなるだろう。書いたのは杏だが。ハートマークや女の子らしいラッピングなど、想像すらしていなかった。

「やり遂げた俺。さ、後はナチュラルにおっしーに渡して終了だな。」

化粧や制服を片付けて普段着のメンズ服に着替え、テニスコートへと向かう。髪型や目の鋭さを誤魔化すメイクで別人だったのだ。当然、注目の的になる。

「ひよ子ー。おっしー呼んでくんね?」

「は?あ、佐々木部外者だったな。」

馴染みすぎた日吉。遼は一度もコートに入っていないのだが。呼ばれた忍足は明らかに顔色が悪かった。

「ご機嫌麗しゅうおっしー。けごたんどうなってんだ?」

「迫真の演技すぎや!怖なって跡部頭抱えとんで!?遼、手塚に渡さんかい!報われてへんやん!」

「目薬と化粧の力。後はまーくんのアドバイス。はいチョコ。かなり驚いて貰ったし俺満足。」

女子生徒より男子生徒に化ける方が遼は自然に見えてしまう。ここまで大掛かりな事は初めてだったので、遼は本当に満足そうだ。

「えらい手ェ込んだ事しよって…。手塚に絶対渡しぃや!?俺は言うたで!」

「みっちゃん期待すんのか?毎年迷惑そーにしてたのに。」

復活した跡部と忍足2人がかりで、手塚に渡すよう説得されていた。渡した後はドイツに勧誘。

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