文句あんのか | ナノ
あからさまな報復


バレンタイン、遼にとっては悲しいと言うか屈辱と言うか…貰えない男子生徒が気の毒になる日。

「明日か…あ、誕生日の御礼と参りましょうかねぇ。超女の子度高いラッピングにしてやる!」

ニヤリと笑みを浮かべるのだが、材料やラッピング用の包装紙などを買いに出る事は、見た目の問題でとても辛い。

「杏ちゃん、ラッピングとか材料の買い出し頼んでもいいか?うん、今年は作りたい奴がいるから。」

敢えて、誰とは言わず色や材料を伝える。勿論、杏にも分けるつもりだ。遼は専門用具を使わないのなら、大概の食べ物を作る。ホワイトデーに何人もの女子へお返しをする悲しい女子中学生が遼なのだ。

「遼お姉様、お待たせ!」

「ありがと杏ちゃん。はい材料費。残りはリズムあっくんと遊びに誘って使ってくれよ。」

気前の良さは氷帝クラス。しかし杏もそこは女の子、遼の指定した店でかなり凝った品を買い求めたので黙って受け取った。ラッピングに関して遼は無頓着なタチなのだ。

「遼お姉様、お手伝いしましょうか?」

「んじゃラッピングの見本作ってくんね?チョコはすぐ終わるからさ。」

暫くして、チョコも出来上がりラッピングも終わったのだが。遼が手渡しする姿が正直怖いぐらいに可愛らしいラッピングだった。中身も可愛らしい作りだ。

「遼お姉様、本当にいいのですか?」

「杏ちゃんは働いてくれたし疲れた時は甘いものだからさ。今日はホントありがと。」

「いえ!」

柔らかく笑った遼に顔を赤らめる杏。傍から見ていれば問題は無いのだが、実情を知っていると複雑だ。

「ふっふっふっふ。けごたんとおっしーのうろたえる姿が楽しみだ。」

バレンタイン前日。杏と晩御飯を作りながら凶悪な笑みを浮かべている遼だったが、杏はバレンタインを心待ちにしているようにしか見えないヴィジョンであった。

「うわ。朝の時点で50突破とかけごたんすげー。遼君のでかい猫頑張ろう!仕返しだから!」

「佐々木。一応三限に授業があるので静かに頼む。珍しく頼んできたと思えば…中学生だったな。」

榊の私室に近い音楽準備室で9時からあれこれ下準備をしている遼。お茶を飲みながら榊も遼手製チョコを食べている。どんな悪事かと不安を隠せなかったのだが、説明されて安堵していた。氷帝男子の制服を着て跡部と忍足へラッピングしたチョコを渡すだけ。マンモス校ならではのやり方だが、遼とバレた瞬間が楽しみなのだ。

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