文句あんのか | ナノ
三歩進んで
乾から、遼より手塚の体は固い上に絶対ストレッチなんてしていないだろう、と聞いた遼。一応しらは切るつもりだったが、やっていないのだ。
「みっちゃん背中押してくんねぇ?」
「…解った。」
手塚家滞在中、風呂上がりのストレッチを習慣にしようとしては忘れている。眠気には勝てない。
「いだだだ。みっちゃん押しすぎ。ベッタリくっつくとか無理!」
「思ったより固いな。」
「みっちゃんの顔よりはマシだ!重いから体重かけんな!」
「重い?自販機を投げる馬鹿力でよく言う。」
「キレてなきゃポイポイ投げれねえ!力込めんなある事無い事たれ流すぞ!」
全くもって色気のない…傍から見ても、男2人がストレッチしているようにしか見えない。しかも片方は成人男性に見えるのだから気の毒な話だ。
「あー痛かった。喧嘩とは別の痛さだな。じゃ、みっちゃん。お返ししてやっから足開け。」
「…言葉を選べ。」
極悪人の笑みを浮かべて、至極楽しそうな遼に手塚は逆らえない。後が怖い。
「い゙っー!」
「…ホント固いな。ほーれ息しろ息の根止めるぞ。背中押してやってんだから。感謝しろ。」
「足で…踏むなっ…」
「これが一番楽なんだよ。身長差考えろ。」
天下の青学テニス部前部長を足蹴にする女。しかも容赦なく、力を込めているように手塚には思える。
「息止まってんぞー。人類の限界に挑戦してみるか?体重しかかけてねぇぞ。力入れたら背骨折れるか試してもいいし。」
「佐々木…殺す気か…」
「いや背骨折ったぐらいじゃ死なねぇよ。せいぜい下半身ダメにするとかそんなもんだ。」
選手生命という言葉を知っているか。言いたくても息をするのすら大変で、遼は面白がっている。やる気は無いのだ。
「はぁ…。本気で川岸が見えそうだったぞ。」
「そーまとー?は無かったんだよな。」
「見る暇も無い。走馬灯だ。発音が違う。」
「ゴメン俺無神論者だからそっち詳しくねぇ。三途の川は聞いたんだけど。」
たかだかストレッチで息切れしている手塚。かなり、遼のやり方は荒っぽいようだ。汗ばんで丁度いいぐらいのものだが、脂汗が出そうな痛さ。
「そーいやみっちゃん、超時期はずれな事に鰻が冷蔵庫にあったから晩飯鰻重だから。泣いて喜べ。」
「脂が乗っていなさそうだな。」
「…みっちゃんの大嫌いなイナゴ食卓に並べてやろうか。」
脅しではなく本気でやるのが、遼の流儀。こんな調子で頭が上がらない。
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