文句あんのか | ナノ
所詮はただのジャージ
青学罰ゲームの定番、男子ならば遼に話し掛け制服を交換して1日過ごす。女子ならば話し掛けてお昼を共に食す。全て1人でやらなければならない、恐怖の罰ゲームだ。
「…佐々木先輩。ちょっといいですか?」
「あ?殴り合いなら年中無休、二十四時間受け付けてんぞ。」
誰が命をドブに捨てる真似をするかぁぁぁ!?と誰しも最初は思ったが、沸点が高いのか低いのか判らない遼相手に言える勇者はいない現実。
「…制服交換を、お願いします。」
「カオリンって意外とお茶目さんなんだな…。聞こえたか?みっちゃん。ジャージ貸せ。」
その場で着替えようとした遼を慌てて制止した姑兼保護者手塚。皆の憧れ、青学レギュラージャージをここまで無碍に扱えるのは遼だけだ。
「…やっぱ短いな。」
着替えた後、袖やズボンを見て呟く遼。ジャージや学ランの方がしっくりするのに遼は女だから制服はミニスカなのだ。
「佐々木さん!そこから動かないで下さい!」
校則違反の筈だが、携帯を構えた女子生徒の群。青学レギュラージャージを着た遼、似合い過ぎて記念にしたいらしい。
「ついでにみっちゃんの眼鏡もかっぱらって掛けてやろうか?」
「是非!」
インテリには見えなくとも似合う!と女子生徒は確信している。情報屋紛いをしている遼は、そんな話も聞いた事があるので冗談で言ってみたのだが。
「みっちゃん、ちょっち貸せ。壊さない努力はすっから。」
「…早めに返せ。」
貴重な筈の、手塚の素顔なのだが眼鏡を掛けた遼の方が更に貴重なので、パシャパシャと写真に収められていく。
「ワリ、もう限界。伊達じゃねぇからな。視力落ちそうだ。」
目を擦りながら眼鏡を外す遼を、一部の女子は動画にしていた。売る勇気は無いが、楽しみたい欲望には勝てないらしい。
「ほい、みっちゃん。」
「レンズを汚すな。」
溜め息を吐きながら、受け取った眼鏡を眼鏡拭きで手入れをする手塚。クラスメートは見慣れている。
「佐々木先輩…着替えました。」
穴があったら入りたいとばかりに、海堂が制服を差し出している。救いはミニスカの筈が、膝より少し高いところだろう。
「ん。まぁ1日、恥晒して頑張れ?」
慰めにならないどころかこの後が悲しすぎる宣告。想定内と言うか、海堂の学ランを着た遼は不自然さを全く感じさせない。丈が足りないのはご愛嬌。部活前には交換を終了させていたが手塚の機嫌は良かった。
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