文句あんのか | ナノ
本人は真面目だ


握力にせよ、腕力にせよ規格外に強すぎる遼だから、携帯はよく壊す。面倒だからアドレスや番号を変えたりはしない。

「けごたん、わりぃんだけど情報売るなり労力払うなりすっから、俺が力いっぱい握り締めても壊れない携帯って作れねえか?」

「作れるか!!遼!てめぇ握力制御しろ!」

どんな深刻な話かと思いきや、つくづく人間離れした相談だったので跡部は思わず読みかけの本をテーブルに叩き付けて怒鳴った。

「いつもはソフトに扱ってんだけどさ、頭に血が上るとつい握り潰すんだよな。世の力自慢ってどうしてんだろ。」

「携帯握り潰す奴なんぞ世界中探しても2人といるか!踏み潰す事も難しいだろうが!」

「けごたん、とりあえず落ち着け。」

はぁ、と深い溜め息を吐いて2人して薫り高い紅茶を一口。

「踏み潰した事はねぇけどさ、俺がいるんだからもう1人ぐらい居てもなんら不思議じゃねぇだろ。」

「遼が生まれた事そのものが世界の大失敗だけどな。握力測定不能でその気になりゃ握手で相手の手を握り潰すだろうが。」

「それ小学校でやらかしたな。砕くとは思わなかったぞ。単に相手がギリギリ手ェ握ってきたからやってみたんだけどな。」

相手にも気の毒な話であるが…小学生ぐらいなら背が高いなどの身体的特徴はともかく、力まで異常だとは認識しない。

「痛みがあるだけ遼は救いがあるけどな、ナイフで腹刺されて来た時は正直焦ったぞ。」

「アレで痛みに気付かない体質だったら死んでるぞ普通に。」

しかし、遼は刺されたまま遙々遠方のあとベッキンガムまで徒歩で訪れていたので、人間離れしている事に変わりはない。

「車すら投げるからな。握力、腕力、背筋、腹筋、その他異常な数字を叩き出して一生飼い殺しにされ…ないな。」

高圧電流の流れる網すら投げそうだ、と跡部は考えずにはいられない。それに遼は顔が広い。そんな事態に陥る可能性が低すぎる。

「人類の限界突破してんだろーな。寝ぼけて目覚まし何度か叩き潰した小学生だったしな。」

真田の祖父に教わるまで、気配を読むような真似は出来なかったのだ。出来る事が凄まじいが。

「文字通り潰れたんだろうな。」

「そりゃもう電池がひしゃげるぐらいには。」

「…一体何歳から怪力だったんだ。」

呆れ気味に跡部は遼を見るが、調べればある程度判る事だ。生まれた時は通常サイズだったとしても、その後の成長具合がとんでもない数字。男装の麗人にすら見えない。

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