文句あんのか | ナノ
似合わない敬称


馬鹿力には定評どころか太鼓判を押される遼。力仕事はよく頼まれるのだ。

「おーいライオン大仏、あぶねぇぞー。」

数十キロはあるだろう木材の束を平然と投げる遼。新テニスコート作成を手伝っているのだ。橘の持つレシピ目当てで。

「うぉっ!?あ、危ない上にい、命に関わるだろうが!当たったら死ぬところだったぞ佐々木!」

間一髪のところで避けた橘だが、動揺しきっている。手を叩きながら遼は首を傾げて

「だからあぶねぇつったじゃねぇか。クリティカルヒットでも精々骨折だろうけどな。」

「佐々木さん…頼みますから何か投げる時はもう少しテンションを上げて大きい声を出して下さい。」

最早不動峰メンバーは見慣れてしまった、適当な誰かか何かを投げる姿。キレていると叫ぶが、平静を保っている場合…忠告に聞こえない忠告をする。

「あー、考えとく。つーか運ぶもんこんだけか?」

制服の遼に、土木作業をさせる橘。視覚的な暴力だとメンバーは出来る限り見ないようにしている。

「そうだけど。つーか馬鹿力すぎんだろ何キロあると思ってんだよ普通分けて持ち運ぶだろいっぺんに他人に向けて投げるとか非常識すぎ。」

「ぼやきしんちゃん。ワザと当てるなら、ちゃんと逃げそうな方向に投げるぞ。当たり前だろ。」

「佐々木さん!やりそうだから本気で止めて下さい!脅しに聞こえません!」

涙目の神尾が訴えるように叫ぶ。内心は皆同じだ。

「いや脅してねぇ。やるならそうするってだけ。」

「…とりあえず佐々木は雑草運びを頼む。」

永遠に続きかねないので橘が震える声で指示を出す。ただ、やたらと腰が低いように見える。

「ハイハイ。多分500なら運べっからさっさと抜けよ。」

「…制服で来るとは思わなかったな、森…。」

「どっちにせよ怖いと思うけどな。」

バタバタと手を振る、立ちっぱなしの遼を一瞬だけ見て内村と森は哀愁を漂わせた。のんびりと空を仰ぐ遼は比較的無害だ。

「遼お姉様ぁぁぁ!!」

ひしっ!と遼に抱き付く部活中の筈である杏。

「あ、杏ちゃん!?」

「杏!?」

「遼お姉様ったら、来るなら教えて下さいよ。メアド交換して下さい。」

ニコニコ笑いつつ、携帯を構えている杏。

「お姉様ってガラでもねぇし杏ちゃん部活中じゃねぇのか…?」

「敬愛の前に部活はありませんから。」

半ば強制的にアドレス交換された遼だったが、練習終了後食事も振る舞われていた。

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