理系バカと呼ばれ | ナノ
普通も悩む




香奈を真人間にする会。ひたすら連れ回す作戦には、全国各地から跡部と香奈の財力によって、ローテーション式に都内に呼び出される。
リアル貞子を連れ回すのだから、人々の視線はかなり痛い。中身にも問題がありすぎるが、どこに連れて行くかで悩まずにはいられないのだ。

「香奈ちゃん、どこ連れて行ったらええんや。ちゅーか行きとぉない。」

引退したものの、やはりテニスからは離れられない謙也は部活中に深々と、哀愁漂うセリフを呟いた。
残像すら見せる謙也の足の速さを徹底解明したい、と狙われているのだ。千歳も相変わらず狙われているが逃げ回っている。

「香奈ちゃん、植物園だけはあかんわ。聞いたら延々と語るで。」

白石は、ちゃんと説明して生命の危機から脱したものの…デート先を誤った。
毒草の知識に自信があっただけに、それ以上の知識満載の香奈に挑んだ事が失策だったのだ。
会長と副会長がここはマズい、と乾や柳などに頼みリストアップされなかったとしても、予想の斜め上を行く。

「白石、それ自分が行きたかっただけとちゃう?観光地や言うとったやん。」

「デートに観光地はあかんてダメ出しされてん。」

「師範は人類の限界目指して波動球マシン挑戦中やし…金色は論外、一氏は嫌やの一点張りか。」

金色は、香奈と一日中理系トークに費やし、野球さながらに戦力外通告まで受けた。当然、一氏は諸手をあげて喜んだがメル友である事に変わりはない。

「ウチも香奈ちゃんに会いたいわぁ。めっちゃ勉強になんで?」

「小春ぅぅぅ!浮気かー!?」

「一氏、香奈ちゃんの論文理解はおろかモノマネもでけんがな。」

冷ややかに金色に一瞥された一氏だが、更に上手がいた。

「…先輩ら、部活ん邪魔せんといて下さい。」

呆れかえった財前が、心底迷惑そうに言い放った。三年生限定の行事なので、財前や切原は除外されているのだ。

「せやかて、暇なんやもん。」

「ちゅーか、謙也香奈ちゃんのデートなして拒否らんかったん?」

「…侑士に負けとぉないからや!」

逃げる、と言う選択肢もあるにはある。ただし会員全てから逃げ回る離れ技だ。千歳はそれでも逃げ切った猛者。
代理ではもめるが、自分が可愛いのは当然だろう。神経をすり減らし、ストレスに一日中晒される。

「あ、せや。香奈ちゃんなぁ、いっつもワンピース着回しとるらしいで。」

「ショッピングか!ええなそれ!」

「謙也先輩、その前に人体実験やらされまっせ。練習再開すんでー。」

嫌な事を思い出させた財前に、謙也が恨みがましい目を向けたのは当然。とぼとぼと駅へ向かう謙也が、凄まじく哀れに見えた。

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