理系バカと呼ばれ | ナノ
いいか悪いか




デートに連れ回す計画は、ある意味順調だった。二年以下は外されている為、香奈に体力が無い事をいい事に疲れ果てるまで連れ回すだけなのだ。

「香奈、次アレ乗るぞ!」

生き生きと遊園地で豪遊する向日。…そのデート料金は香奈が無理矢理出させられているのだが、気にしていないらしい。

「あれなぁに〜?」

見上げる先にはジェットコースター。先程まで、ひたすらバンジージャンプをやらされて顔色は最悪だ。恐怖ではなく、振動で。
こうしてひたすら連れ回し考える暇すら与えない。
作戦としては良かったのだが。…いかんせん中学生達の予想を遥か斜め上に裏切る。

「…香奈。そん格好は何じゃ?」

香奈の自室に入り、仁王は硬直した。
下着すら無い素肌に、大きすぎる白衣を着て、論文を読んでいたのだ。女の子座りで膝の上には論文の束。嫌でも胸元に目がいくのは悲しい性だ。
コードと見紛う長い髪が白衣を際立たせ、そちらの方ならばさぞかし狂喜乱舞するだろう。
香奈の頭を軽く叩き、見上げさせた仁王はカジュアルな格好。

「なぁに〜?」

「なぁにじゃなか。洋服は?」

「全部洗濯機〜。」

メイドが休みを取り、一週間。無精癖の激しい香奈は長年使っていたパジャマを捨てられ、仕方なしに父親から白衣を借りたのだ。
のんびりした口調で説明を受けると、仁王は躊躇わず薄手のジャケットを体に掛けた。目の毒だ。

「全裸じゃなかっただけマシじゃが、そん格好じゃ襲われて当たり前じゃ。香奈の中身を知らん連中は喜んで引っ剥がすぜよ。」

不思議そうに首を傾げ、仁王を見上げる仕草すら幼く見える。説教はされるがやらない仁王は、会長たる跡部に連絡した。
厄介事は押し付けるに限るのだ。更に現在は、論文優先で仁王へ協力を要請する事すら考えていない。

「…香奈。俺様がやった洋服は?」

「洗濯機じゃと。香奈の部屋は涼しいナリ。」

寛ぐスペースは無いが、暑さの苦手な仁王には有り難いアンチエコロジー。
ジャケットを香奈から取ると、跡部はガミガミと説教を始めた。
忍足がやりそう、と示唆していたがあまりにもマニアック。
論文を取り上げられ、正座で説教され続ける香奈を仁王は写メで忍足に送っていた。

「着なくていいの〜?」

「そんなわけあるか理系バカ!!大体日曜日は誰かが来るって何度も言っただろうが!」

ちなみに、忍足は写メを見た瞬間思い切りお茶を吹いて、あれこれ着せて遊ぶ計画まで立てていた。
仁王と忍足は、合宿で異次元空間への耐性をかなり鍛えられているのだ。

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