理系バカと呼ばれ | ナノ
受験生ですから




中学校三年生と言えば、受験が第一に挙げられる。私立でも外部へ進学する者は珍しくない。

「香奈。進路調査は勿論高等部進学にしたよね?」

引退したにも関わらず、昼休みは毎回樺地に運ばれ、もとい抱えられて屋上での生活状況チェック。
滝の笑みに、香奈は首を傾げて不思議そうだ。

「ううん〜。アメリカでタイムマシン実現化をグループ研究するよ〜。他にも色々していいって言ってくれたんだ〜。」

何気ない日常の1コマすら香奈はぶち破る。滝は笑顔のまま固まり、他メンバーは箸が止まった。
真人間への道を逆に全力疾走宣言しているに等しい。文字通り寝食を忘れ、ひたすら研究三昧。そもそも、日本に居る理由が切なすぎる。水と安全がタダ、と言うそれだけで義務教育を受けているのだ。

「…香奈ちゃん。それって大学なん?」

「違うよ〜。アメリカこくぼ」

「不用意な発言をさせないで下さい!それにあっさり言うなー!!」

日吉必携が唸り、一部のメンバーは我に返った。それ以前に、大学を卒業しなければ医師免許を取れない発想には至らないようだ。

「…跡部。権力で何とかならん?」

「権力を万能兵器にすんな忍足!香奈の研究に幾らかかってるかすら俺は知らねえ!」

あまりにも多岐に渡る研究の数々、本人すら把握していない莫大な財産。とりあえず天文学的な金額が動くだろう事は、想像に難くない。
知りたくもない、と跡部は暗に訴えている。

「…とりあえず、メンバーに伝達?もしかしたら止められるかも。」

「妥当ではありますね。」

誰もが期待している、香奈へのツッコミマスター日吉は一番の功労者。真人間にする会での発言権は、会長の跡部に次ぐ。そんなもんは要らないと言われそうだが、事実だ。

「今すぐ連絡する。」

「って人が真剣に話し合ってるところで平然と論文を広げるなー!食事中は論文を読むなと何回言えばいいんだ!」

「食べたよ〜?」

どこまでもマイペースすぎて空気を読まない、周りが葬式さながらに重苦しい空気を背負っている事すら興味を持たない。論文を取り上げられ、日吉がくどくどと説教をする中。
跡部は全国各地の会員に伝達していた。

『香奈が進路をアメリカに決めたらしい。早急に会議を開く必要がある。都合をつけて集合するぞ。』

それを聞いた会員達は、目眩や頭痛、更に胃痛に苛まれていた。特に、香奈への耐性が出来ていない県外メンバーは。
ある意味、日本を揺るがす一大事。正直すぎるのも問題だが自分達も明日は我が身だ。

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