理系バカと呼ばれ | ナノ
市中連れ回し




香奈を真人間にする会、メンバーは頭を抱えていた。
流石に大阪と沖縄は回線での会議となっているが、先日の耳騒動を受けて休日に香奈を放置する事が危険すぎると理解したからだ。

「せや。休日は交代で香奈ちゃんと普通に遊びに行ったらええんとちゃう?」

「…忍足。真田の野郎が普通に遊びに香奈を連れ回せると思うか。」

「加えて手塚も怪しいよん。ねー大石。」

全員の脳裏に、職務質問される真田と手塚が思い浮かんだ。
香奈は、顔色が悪く髪が長い少女にしか見えない。怪しまれて当たり前である。

「…と言うか、俺と真田と仁王と手塚と」

「幸村、もう言うな。解ってるから。侑士も充分危ねーから。」

三年限定となるこの計画だが、致命的な欠点がある。香奈に狙われている者がいるからだ。指折り数えると悲しくなる。
遊びに連れ回すだけなら、複数でも構わないのだろうが香奈に手を上げられる三年は少ない。見た目の問題や、あまりにも病弱そうな香奈を叩いては周りの目が痛いのだ。

「異次元空間で監視をしたところで無駄だな。」

「柳君、その前に私達が倒れます。」

香奈が何をしているのかさえ、中学生には解らない。説明を求めたところで、優しさの欠片も無い解説が待ち受けている。

「科学に全く関係の無い場所へ連れて行く手がありますね。信濃さんの意欲を殺げる場所、門外漢であったり研究が終わっていたりすれば話が早いかと。」

「アホか木手!香奈ちゃん何でもかんでもやっとるんやぞ!?映画にゲーセン科学だらけやん!」

「…科学に無関係、という条件は100%満たせないだろうが終わっている可能性はある。」

デジタル化のご時世、あらゆるものと科学は切っても切れない。香奈ならば、とうに終わって興味を示さない事がある。
乾と柳は顔を見合わせ、例を上げ始めていた。ウィンドウショッピングなど、飾り気の無い香奈には無縁。アウトドアは場所次第。引きずり回して自分の世界へ行かせる隙を与えてはいけない。

「あ、せや!観光地巡りやったらええわ!」

「白石、それ単に自分がやりたいだけだろ。香奈は都内から殆ど動かねえ究極の引きこもりだからな。」

義務だから学校に通っているだけで、必要が無ければ一生研究三昧と決め込むだろう。それがどれだけ危険か、全員が知っている。
宍戸の愛犬も危なかったのだから、かなり切実だ。

「女の子が好きそうな所とか、行ける人が連れて行くようにしよう?流石に…真田とか手塚が香奈を連れて有名なデートスポットには無理があるから。」

はぐれて帰られては元も子もない。背に腹は代えられない。ないない尽くしでこの休日プランは決まったのだった。

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