理系バカと呼ばれ | ナノ
効果は抜群だ




夏休みも明け、名実共に引退した三年だが。香奈専用部室にて一部を除くメンバーは頭を抱えていた。
香奈の頭には、無いはずの耳。加えて動くのだからたちが悪い。

「…忍足さん、電車でどうやり過ごしたんです?」

「香奈ちゃん、ちっこいからカバンで。」

それまでは、注目の的だったのだ。薄着の氷帝制服を着た少女というステイタスで、髪の毛の長さと顔色の悪さを差し引けば誘拐されかねない。
香奈は忍足に引きずられ、すぐさま専用部室に閉じ込められるとメンバー召集。

「…香奈を甘く見てた、かも。」

「香奈はフツーじゃねえけど!自分で作った物体X飲むとか、フツー考えねぇって。」

「ねー香奈ちゃん、触ってみてE〜?」

「いいよ〜。触覚は無いみたい〜。」

重苦しく眉間にシワを寄せていたり、胃痛を訴えたりと忙しいメンバー。
芥川と香奈はのんびりのほほんと有り得ない状況でマイペースを貫いている。香奈はインドア、芥川はアウトドアと種類が違えど、どこか似ているのだ。

「わー、ふわふわ!」

「ジロー、何楽しんでんだ!」

跡部の一喝に芥川は首をすくめた。香奈は耳を動かして、ノートにメモを取っている。

「…ごめん、俺もう無理。腹痛い。」

「大丈夫ですか、宍戸さん!」

笑いではなく、ストレスによる胃痛。大丈夫じゃないから訴えたのだが、通じていないようだ。

「ね〜景吾君。お風呂も入ったし徹夜もしてないから教室」

「誰が行かせるか理系バカ!重要性を考えろ!」

忍足が居なければ、電車で誰かに捕まり誘拐事件にまで発展しそうな見た目を全く考えていない。日吉必携が唸るのも仕方の無い話なのだ。
香奈が自分さえ実験に使うとんでもない事がよく解った。

「なぁ香奈ちゃん、何で耳だけなん?」

「聴覚の実験だから〜。人体には尾てい骨があるしバランスを取る為にあった器官が退化し」

「忍足さんも語らせないで下さい!」

尻尾もあると正にコスプレキャラクターだが、香奈は実用性だけを求めるので無意味だ。

「…それより、これどのぐらい効果あるのか分からないよね。」

「…明日もか?クソクソ香奈!迷惑なもん作るなよー!」

香奈は全く理解していないが、見た目で攻撃力抜群の耳だ。実害は無いのだが、精神的に苦痛を伴う。

「早くて〜1日未満。遅くても〜3日は効果が持続する予定〜。」

その日、部室に閉じ込められっぱなしだったが翌日は無くなっていたので、安堵したメンバーだった。忍足はさり気なく、写真にしているのだからタフ。
延々と説教される香奈に、もう誰も同情しない。

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