理系バカと呼ばれ | ナノ
悪意なき悪行




豪華な昼食を終え、一度風呂に放り込まれた香奈は沖縄リゾートに来ました!と言わんばかりの格好をさせられ、森に突入しないようにと監視の乾と浜をうろちょろしていた。
勿論研究第一だから、固有種を集める為だ。

「ね〜なんでハブ捕まえちゃダメなの〜?」

「…それよりも、信濃の興味を引く人間がいる。木手と言うのだが、あいつは筋肉を別々の方向に動かせるぞ。」

無垢な子供のように、危ない事をサラリと言ってのける。乾は心で平謝りしつつ木手を未然に防ぐが、生け贄に選んでしまった。
これも全ては、真人間にするため。

「どこにいるの〜?」

「案内しよう。」

その気になればあっさり手に入るハブよりも、香奈は木手に興味を示した。目が輝き、事情を知っていると直視したくない。
乾に案内されながら、香奈は世にも恐ろしい独り言を言い続けていた。

「彼だ。木手、信濃が話をしたいらしい。」

「…何ですか?」

思い切り冷ややかな目を木手が向けるが、香奈にそんなものが通用していたら誰も苦労しない。かなりの身長差だが、たじろがず香奈は言い切った。

「今すぐでしたら5億ドルを御礼に出来ます。どうか私の研究にご協力お願いします。」

比嘉の面々は思い切り固まってしまった。
何をどう研究するのか。貨幣が円ではなくドルなのは何故か。ツッコミどころ満載すぎる、端的なお願い。

「言っておくが、信濃は現時点でこれでも一応仮には日本が世界に誇る有数の科学者だ。…跡部や手塚も狙われている。」

「…この、少女が?」

顔面蒼白のちっちゃいリアル貞子が、と言いかけた木手。見た目のインパクトがとんでもないのは今更だが六角のオジイを治療していた事を忘れている。

「あぁ。認めたくない気持ちは解るが、データ収集能力は理系のみ、ずば抜けている。体力テストをやれば解る。」

「…研究に協力はしたくありませんが、体力テストでしたら。」

「そう、ですか…。」

うなだれる香奈だが、内容が内容だ。頷いたが最後、研究し尽くされる。
しかしテストは敢行されるのだから、比嘉一行は酷い目に遭うのだ。

「ではまず、一万メートルを走って下さい。器具を準備しますから。」

「…まず?」

「本来なら、午前中最終メニューだが仕方ないな。…花畑が見えるぞ。」

そういう大事な事は先に言え!と唱和したが、香奈には大事とは思えないのだ。香奈が同じ事をしても、倒れるだけでテストになり得ないのだから。

「…氷帝と青学が一緒に何故こちらへ?」

「信濃を真人間にする会、のイベントの一つだ。全員集めるとメンバーが吐血しかねない。」

取られるだけデータを取られた比嘉。あんな非常識な香奈を放置出来ないと、参加表明する。
…半ば恨みもあるが。

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