理系バカと呼ばれ | ナノ
科学ラブ!私は科学を愛してる!




昼休みは、レギュラーと準レギュラーが集まって食事をする。毎日、跡部の下に樺地が迎えに行くのだが。本当に読んでんのかお前。と思いたくなるような速さで紙をめくりつつ、小さいにも程があるだろう手作り弁当を食べる香奈は、無視を貫いている。
意図的では無い事が余計悪質だ。

「おい樺地。信濃香奈を運べ。」

「ウス。」

必要最低限、作るのも食べるのも手間暇かけない事を前提にした食生活を送っている為、身長にそぐわない軽すぎる体重。樺地なら片手で持ち上がる軽さだ。だが、一応女子生徒なので両手で持ち上げた。

「む?…えっと〜樺地君だっけ〜?」

「ウス。」

バサバサと紙が、香奈の手から落ちていく。
生徒にはどうしたって理解出来ない英語と数式の羅列だ。その道をかじった程度でも、とりあえず凄いとしか思えない論文。

「喜べ、信濃香奈。お前は今日からテニス部のマネージャーだ。好きなだけ研究させてやる。」

樺地に抱えられた小さい髪の長い女の子、と言う些か怪しい光景に構わず、跡部は高らかに宣言した。
クラスメートは非難どころか、跡部の正気を疑う。こんな研究オタクにマネージャーなんて務まらない、と考えたからだ。生粋のインドアである香奈は体力があまり無いので、至極当然の反応ではある。

「あ、はい。それでは遠慮なく徹底的に調べて研究させて貰います。」

小さく頷いた香奈は、そのままカバンを肩に掛けた樺地に抱っこされて連行された。
香奈が年上に、全く見えない。ゆらゆらと長すぎる髪が揺れ、既に香奈の頭では研究したい事を上げ連ねている。しかし、時折呟いていて物凄く不気味だ。
香奈の実験を安請け合いして後悔した、サッカー部やバスケ部員達は言わなかったのだろう。どうせなら俺達と同じ目に遭ってしまえ、と。

「先ずは〜体力テストをして〜試合あるなら〜原理を追求すればいいかな〜?先天的特徴の目立つ人は〜もう」

「信濃、不気味だから止めろ。そして直せ。」

歌うように、高い声で小さい独り言を聞かされる方は堪ったものではない。だがこんなものは序の口で、更なる精神的苦痛に晒されるのだ。
天才肌の研究肌。やりたい事だけやってきた訳ではないが、あまりにも奔放でベクトルの間違った教育を受けたのだから。

「インサイトだっけ〜?日本語だと洞察だったはずだから〜癖を見抜く〜?」

「信濃、お前洞察の意味解ってんのか?」

「よく解っていません。使いませんから。」

妙な所でバカ正直だが、これでも日本が世界に誇る科学者だ。

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