理系バカと呼ばれ | ナノ
真夏の魔物




長すぎる髪の毛はお団子にしても余るので、仕方なく垂らし水着は明るめの色。傍から見れば、胸が大きすぎて病的なまでに細い事が強調されるのだが。メンバーはそっと溜め息を吐かずにはいられなかった。

「ぷはっ!見えるのに届かない〜。」

珊瑚を採りたい、と海に潜っては繰り返す香奈が実に子供っぽいのだ。

「…なんか、エロくないか…?」

「気にしちゃダメだよ、向日。当分やり続けるだろうし。」

近くで泳ぎながら香奈を見張る向日と不二。殆ど自分達が楽しんでいるが、流石に香奈も装備無しで森に突入は出来ないのだ。

「…香奈がマトモに見えるな…。」

宍戸がこの場にいる全員を代表して呟いた。散々振り回され、更に研究にご協力をと熱心に交渉しようとする香奈が、声さえ聞こえなければ何度も潜ろうとする少女に見える。

「酸欠になった〜。」

ふらふらと浜辺を歩く香奈に、バカンスを満喫している跡部が迷わずスポーツドリンクを差し出した。個人的な味覚や感情にかなり興味の無い香奈は、これで充分なのだ。

「お、永四郎ー。青学の連中がいるさー。」

「…今日は厄日ですかね。しかし、見慣れない顔もありますよ。」

木手以外の比嘉の面々は、興味津々とばかりに氷帝メンバーを見る。特に、紅一点の香奈を。

「でっかい胸だばぁ。」

「田仁志クン、露骨すぎます。」

「…何語〜?」

方言に不慣れな香奈は、首を傾げドリンク片手に不思議そうだ。

「信濃、日本語だ。」

これに関しては、気持ちは解らなくもない手塚がフォローしたが。木手が固まった。顔色の悪さと、一目瞭然の長い髪。幼女誘拐かと思いかけた香奈と特徴が一致するのだ。

「あ!ヤドカリー!」

目を離せば、香奈は沖縄本島にのみ生息する天然記念物の固有種さえ捕まえようとする。…知らなければ、微笑ましいのだが。
思春期の彼らには眼福かそれとも目の毒か。

「…木手、アレはさっきいたリアル貞子だからな。髪結んだだけでかなりちげぇんだよ。」

固有種ではなかった、と顔を上げた先に。知念と目があった。

「…すいません、髪の毛」

「アホかぁぁぁ!初対面の人に向かっていきなり髪の毛くれとか止めんかい!心臓に悪いわ!」

香奈のパターンをある程度知っているからこそ、出来る芸当である。知念は香奈を見下ろし、前髪の事かと考えてしまった。

「わんの前髪、美容師さんに染められたさー。」

「知念、それ以上言うな!信濃さん語り始める!」

昼食、という事で一度解散したが。跡部と手塚は企てを始めていた。
波動球マシンへの挑戦。

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