理系バカと呼ばれ | ナノ
紫の薔薇の人的な
熱烈に香奈を抱き締め、金色は熱っぽく語りに語っていた。
「あぁ光栄です信濃香奈さんにこんなとこで会えたやなんて神様有難う!論文全部読みました!タイムマシン実現応援しとります!あぁ、四次元ポケットも夢やないんやな!」
「…タイムマシンの論文?このちっこい女の子が!?ボケか!」
「汚い手で触んなや一氏!!世界の宝、日本有数の物理学者やぞ!」
「論文って〜どの論文?最新はギラン・バレー症候群に対する新たな治療法を共同発表したよ〜?」
ぽややん、ととんでもない事をあっさり言ってしまう辺り、自分の価値を理解していない。
「へ?物理学だけやないんですか?」
「毒理学の研究に〜標本採取したいんだけぐぇ。」
金色の疑問に答えようとした、香奈の細い首を恐ろしい笑顔の忍足が掴んだ。心なしか、引きつった笑顔に見えてしまう。
香奈は髪の毛だけでも充分目立つ上に、濃い四天宝寺メンバーと一緒だからすぐに見つかってしまうのだ。
「香奈ちゃぁん?誰が、いつ、謙也んとこ言ってええ言うた?」
「侑士君〜?連れて行かれたの〜。」
痛みに鈍感な香奈は、忍足の笑顔に怯まず事実だけを正直に話す。誰に、と聞いたところで無駄だと忍足は嫌と言う程知っている。
生半可な覚悟でたたき直せる段階ではない。
「信濃さん!よ、良かったらメアドをこ、交換してもらえません?」
「あなた、だぁれ〜?」
忍足から金色に視線を戻して、首を傾げる姿はまさしく歩くホラー。青白い肌に甲高い声、長すぎる髪の毛は肝試しに最適だ。
「あ、侑士。…コレが、信濃香奈?」
「当たり前や。香奈ちゃんみたいなんがゴロゴロ居ったら日本終わるわ。」
忍足に首を掴まれながら、物理トークに花を咲かせる理系バカと浪速のニュートン。はっきり言って奇妙奇天烈な組み合わせだが、金色以上に頭の回転が速く体が追いつかない典型の香奈は大変だ。
白石や遠山は、何か別の生き物のように香奈を見ている。
「今はね〜光速に耐える金属の作成と超音速で動くロボットの小型化を」
「姉ちゃんロボット作れるんか!?」
「金ちゃん、当たり前やわ信濃さんはロボット工学もやっとんねんで?」
目の色を変えた遠山なのだが、致命的な勘違いが存在する。香奈はあくまで作業用ロボットを作るのだ。タイムマシンに載せる為に、あれこれと研究しているだけでアンドロイドなどは興味すら無い。増してや自意識など持たせる意味すら考えない。
「…香奈ちゃん、帰るで。跡部が睨んどる。」
「またね〜小春ちゃ〜ん。論文送るね〜。」
「待っとります!」
戻るなりバシバシと頭を叩かれ、説教を受けるのであった。
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