理系バカと呼ばれ | ナノ
笑顔の裏には
氷帝ジャージを着せられたまま、手塚VS千歳と化した試合を熱心に見つめる香奈。目がきらきらとしていて、よからぬ事を考えていると氷帝メンバーはすぐさま理解してしまう。
「ボードゲームだっけ?一手はしょーぎだっけ?」
単位は知っているのに、ルールを知らない本末転倒な状態。
「将棋や囲碁ですけどね。何を考えてるんです?」
聞いておかなければ、どちらかが確実に不幸になってしまう。日吉の努力は誰もが認める表彰ものだ。
「どちらか、脳波とMRIと」
「人体実験に巻き込むな理系バカ!!」
盛大に、三年と日吉が唱和した。思わず観衆が氷帝メンバーを凝視してしまう程だ。
「いいですか香奈先輩。百歩譲って相手の同意を得たとしても医療行為は違法だと香奈先輩が言っていますよね?解剖だの言ってますけど人間にしていい事なんですか?」
「ホルマリン漬けなら」
「ひよっこー!香奈にリアルグロホラー語らせるなー!真面目に怖い!」
半ば涙目の向日。ホラーが心底嫌いで、香奈のビジュアルに慣れてきたのに言動までホラーが付いて来る事もある。
研究大好き科学を一生追求したい香奈には、永遠に解らない。見えない物を研究する時もあるが、お化けは科学と程遠く真逆だ。宇宙人については推論を立てるが、それ以上は見なければ解らないと割り切った。
「百練自得の極み…!?」
どよめいた観衆に、香奈も目を向けて輝かせる。
跡部や宍戸は、心で手塚に合掌していた。終わった。
「面白い…!!」
心底嬉しそうな香奈を、可愛いと思える人は事情を知らない幸せな人。
ちなみに手塚戦から観戦を始めたので、波動球合戦やお笑いテニスを見ていないのだ。勿論、ビデオ班が撮影しているので後に波動球マシン完全版が作られる。
「…ねぇ桃先輩。香奈先輩が珍しく笑ってんだけど…スゴい嫌な予感。」
「明らかに手塚部長だな…終わったら言うか。いや、言わねーといけねぇな。いけねぇよ。」
視力抜群の青学メンバーが気付く程、この時の香奈は笑顔が眩しいと思わせるに十分だった。
よからぬ事だと解るから、あまり喜べないが。
「…越前も危ないね。」
「ッスね…。」
明日は我が身の青学メンバー。早々に目を付けられていた跡部は、慣れもあって平気だが。
嵐の如く質問攻めをする香奈に、悪意が欠片も無い事が苦しい複雑な年頃。教えてくれるなら徹底的に聞きたいのだ。
「跡部、決勝も来るのかな…?」
「大石…絶対来るよ。観月みたいに。」
半ば遠い目になる、氷帝と青学だった。放置出来ない香奈を、どう止めるかと悩みたくもなる。
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