理系バカと呼ばれ | ナノ
国家的財産




凄まじいタイブレークとなった跡部VS越前。香奈は半狂乱になりながらノートにバリバリ書き続け、不気味な独り言を言い続けるからバカスカ叩かれた。
第一に、越前の体格からビッグバンを打つ場合過剰な負担がかかるのだ。体重と比例する重力の関係さえ、研究対象。
比嘉に危険が迫っていた。

「香奈。髪の毛伸ばす薬を作れ。お前が欲しがっていた、俺様の髪の毛を一本くれてやる。」

「はぁい。」

何に使うのか、想像するだに恐ろしい条件。遺伝子情報から、インサイト研究を進めるつもりらしい。
即座に調合内容を決め、薬剤師へと連絡する。

「…跡部、2人も跡部はいらねぇぞ?」

「完璧なクローン技術はまだ出来てねえ。法にも規制がある。いくら香奈でも、それは不可能だ。」

心底嫌そうな宍戸に、跡部は鼻で笑った。
最先端を突っ走るが故に、前例があると身動き出来ない。
法律には特例があるが、香奈の跡部研究は個人的なもの。
レシピがあれば、薬剤師も香奈の財力サポート下ですぐに作ってしまう。恐ろしいまでに、金を惜しまない科学者。

「2時間後に〜会場に届くよ〜。」

とんでもない数字なのだが…中学生にはよく解らない事情だ。ジャージを着たまま、携帯を見ている。
香奈がおかしいと言った通り、照明が落下するトラブルも起きて散々な氷帝。香奈はこれで心置きなく研究に戻れると、携帯をしまってノートに集中し始めた。

「ま、決勝の座席も取ったし香奈もまだマネージャーだからね。」

「絶対帰る気ですよね、香奈先輩…。」

ノートにまた追加事項を書き連ねる香奈を見ながら、溜め息が止まらない氷帝メンバー。

「いざとなれば忍足先輩が香奈先輩を引きずってでも連れ出せばいいかと。」

「日吉、それは俺に対するイジメとちゃうか?」

「一番自宅が近い人は忍足先輩ですから。」

そんな昼。昼食も終えたメンバーはのんびりしていたが、香奈の言う通り2時間で薬は届けられた。
素晴らしいまでに目立つが香奈の価値を知れば解る。

「Dr.信濃。ご注文の品をお持ちしました。」

「有難う。」

香奈に手渡された、遮光瓶の薬。呆然とする氷帝メンバーの中、運びに来た男は優雅な一礼を残して去っていった。

「はい、景吾君。」

「あぁ。…たかが香奈1人に政府が動きやがる。」

政府!?と説教兼問い質しに忙しくなる氷帝。
ここまで来ると、どれだけとんでもない人かと聞きたくなるのも道理。四天宝寺VS青学まで、延々と説教は続いていた。
周りの目が、香奈を恐れるのも時間の問題だろう。

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