理系バカと呼ばれ | ナノ
風情に風流は日本文化




近場で夏祭りがある。と向日や芥川は楽しげに話し合っていたが。氷帝が抱える巨大な爆弾の存在から逃げてもいた。

「ねぇ跡部。香奈、連れて行く?」

日本の夏には欠かせない、夏祭り。肝試しなども夏ならではのイベントだが、香奈はあまりにも外界に無頓着な印象があった。
事件、事故、自然現象などは耳に入れているが、基本的に世情には疎い。特に、地域的な話となると概算を出したり、統計的な話に吹っ飛んだりするからだ。

「あーん?夏祭りって普通なのか?」

跡部も何だかんだで帰国子女のお坊ちゃんである。社交シーズンだとは、理解しているが興味を示さないのだ。

「…跡部も、もうちょい下々の事情知った方がええで?今までスルーしとった理由が解ったわ…。」

習い事や趣味、テニスに費やす時間が圧倒的だから知らないのだ。ある意味、香奈と同種である。
浴衣を用意させ、香奈を連れ出す事となった。

「…髪下ろしたらアウトだろコレ。」

長すぎる髪を団子に纏めても余り、昔の遊女のような髪型。青白い肌に、黒い蝶が描かれた薄紅色の浴衣はやはりホラーだ。宍戸は思わず唸ったが、浴衣ですら豊かな胸を誤魔化しきれていない。屈めば谷間が見えかねない、思春期の少年達には目の毒だ。

「お化け屋敷で逆に驚かせる客になりそうだCー。香奈ちゃん結構色々似合いそうだね〜。」

カランコロンと下駄を鳴らしながら、滝に手を引かれる香奈は年齢不詳だ。
幼く見えるが、胸が大きすぎる上に髪も長い。

「白いかんなぁ…あ、香奈ちゃんアイス食おうや。奢るわ。」

「おご?ラテン語〜?」

「だからなんでそっちに話が行くんだ!帰るまで黙ってろ!」

髪型が崩れた場合、洒落にならない怖さなので手を出せない一同。
忍足からアイスを渡され、ペロペロと舐める香奈をつい凝視してしまう。食べ方を教えた忍足は、宍戸や日吉にボロクソに怒られている。
2人共顔が真っ赤だ。

「あれ?氷帝…そいつ誰なんだ?」

桃城が遊びに来ていて、香奈を指差した。印象が違いすぎて判別できていないのだ。

「コレ、香奈。やっぱり印象変わるもんだな…。」

向日がしみじみと呟く。髪を結び、浴衣にアイスを舐める姿は小学生のように見えるのだ。
全てはメイドによる努力の結晶である。一見無害なのだから。

「え。香奈、先輩…?」

振り向かされた香奈は、髪が軽やかに揺れて清楚に見えなくもない。見上げられて、狼狽える桃城。

「別人みてぇだろ?ま、見納めでもしとけ。」

偉そうに言う跡部は、イカ焼きを片手で威厳ゼロだった。

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