理系バカと呼ばれ | ナノ
身嗜みはきちんと




万年寝不足の香奈は、素晴らしく美容に無頓着だ。日焼け肌荒れ何のその、研究に人生を捧げる香奈に美を求める事は難しい。

「あれ、香奈唇割れて出血してる。」

「痛くないよ〜?」

練習終了後、強制的にあとベッキンガムへ連れて行かれた香奈の唇に、滝が気がついた。
エコロジーのエの字すら見当たらない日常生活、冷暖房完備でフル稼働させていれば荒れもする。日焼けで肌もボロボロだ。
女らしさをどこかに捨てて育ったと言っても、過言では無い。ちなみに、夏休みの課題を終わらせるべく集合していた。

「スキンケア以前に、香奈ちゃん風呂サボるやん。髪の毛焦がしてん気にならんとか切った方がええんとちゃう?」

「宍戸みたいにすげー大事にしてるワケじゃないだろうしな。」

休憩、とばかりにお茶やお菓子に手を伸ばす一同。あれだけお風呂に入らず、何もない事は有り得ない。

「でも香奈ちゃんの髪の毛掴むの便利だC〜。」

「捕まえるには便利だな。目印にもなる。」

髪を切ってしまえば、街中ではぐれる事請け合いで逃げられる。小柄だから、顔色が悪いだけでは見つけにくいのだ。

「今日は三つ編みで不気味さ軽減してますし。」

鳳も何だかんだで結構酷い言い草だ。髪の毛を束ねたのはメイドだが、頭を揺らすと三つ編みも揺れてやっぱり怖い。
焦げた髪の毛も放置する無頓着さに、呆れたくもなるだろう。

「かと言って香奈先輩が、スキンケアだのに時間を消費するとは思えませんから習慣にさせる手もあるにはありますね。」

「とりあえずリップクリーム付けさせようか。跡部持ってたよね?」

それは所謂間接キスなのだが、香奈に恥じらいを求めても仕方がない。跡部は新しいリップを持って来させたが。
誰が付け方を教えるのかと大論争に突入した。無防備すぎるのだ。

「…解りました。」

先輩命令とあらば、樺地があっさりやる筈なのだが、生憎樺地は別の事で部屋にいない。日吉が涙を呑んでやらされる事になった。

「香奈先輩、上を向いて下さい。」

「あぅ。」

三つ編みを引っ張られ、強制的に天井を仰ぐ香奈。日吉はさっさと塗りたいのだが、香奈の口が半開きで思わず手が止まる。
相手が香奈でも、やはり思春期の男なのだ。薄いピンクの唇に赤い舌、青白い肌が強調してしまう。

「…エロいな。」

「岳人、みんな解っとんのやから言いなや。」

これで舌でも出されたら、最悪だ。人格さえ無視すれば、ロリコンの烙印を捺される。日吉は何とか塗ったが、香奈が舐めてまた塗るハメになった。

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