理系バカと呼ばれ | ナノ
欲しがりません作るから




その後、関東大会にて氷帝の夏は終わった。と誰もが思っていたのだが。肝心要の真人間にする会は続行していた。

バチバチバチバチ!

火花を散らし、作業に没頭する香奈を跡部達は呆然と眺めていた。
波動球の人工的な再現、として香奈はバッティングセンターのマシンに似た、波動球マシンを作っていたのだ。

「実測値時速122キロ、繊維の耐久性を考慮した上で出しうる最高速度」

スバァン!と久々に日吉必携が唸った。作業中の香奈は、文句があれば機械を改造しかねない。理論を呟きながら髪の毛を少々焦がしている事にすら、気を払わないのだからイライラするのも当然だ。

「…何作ってんだ理系バカ!」

その場にいた、香奈に説教をかませるメンバーが一斉に唱和した。夏休み、誰もが楽しみを満喫する期間。香奈も例に漏れず、ベクトルは違えど楽しみを満喫していたのだ。
受験生だがエスカレーター式の氷帝、外部受験以外は羽を存分に伸ばせる。真人間にする会はそれを潰していた事に今更気付いたが、後に引けない状況だ。

「肘と手首に異常な負荷をかける〜テニスボール発射機〜。」

「…波動球か?」

跡部が呟き、メンバーは顔を見合わせた。しかし、またけたたましい機械音に日吉必携が唸る。
騒音で会話が成立しないのだ。

「それ以前に、何で作ろうとしてるの?」

「再現出来たら〜楽しそうだからだよ〜?」

必要器具を持ったまま、不思議そうに首を傾げている香奈。滝は言うんじゃなかった、と額を押さえる。
香奈の行動パターンは難解だが、科学に纏わる事ならば単純明快。ツッコミの第一人者、日吉は部活を終えて疲れているのに余計に疲れそうだ。

「人間吹っ飛ばしかねない殺人マシン作ってどうするんですか!?」

「遊ぶの〜。」

間違いなく、氷帝部員が餌食になるだろう。と彼らは確信したが、香奈の人脈は理系のみインターナショナル。その道のプロフェッショナル達に依頼すれば、二つ返事でやって来る。
そのコネで、世界トップクラスのテニスプレイヤー大集合、と言うのも無理な話にならない事が笑えない。

「どないして遊ぶんや?」

「打てそうな人集めて〜体力テストして〜カスタマイズするの〜。」

それのどこをどう見れば遊びだ!?命懸けだぞ!?と唱和され、香奈はまた正座をさせられて説教。

「大体何でスカートでそんな作業するもんじゃねぇだろ焦げてるぞ!?」

「髪の毛も束ねて下さいと何度言えば頭に残るんだ理系バカ!」

しかし、後に波動球マシンは跡部のスポーツジムに導入される。

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