理系バカと呼ばれ | ナノ
差別はいけません




コンソレーションを経て、満を持しての関東大会。
流石にレギュラー揃い踏みとなれば、香奈も強制連行される。

「景吾君の相手、もう肩に負担がかかりすぎて〜続行したら日常生活にも支障を来すよ〜?」

「手塚は解っとるで、香奈ちゃん。新作応急処置道具一式、用意しとき。」

救急箱はとんでもなく大きい氷帝。
中身は香奈が跡部に言われて、効率だけの応急処置道具などが詰まっている。特許取得済みで被験者が氷帝テニス部、と言う手の込んだ真似をしているのだ。何事も法の名の下、手続きが面倒くさいのである。

「はぁい。崇弘君の腕は処置終わったよ〜。後2分15秒。」

香奈特製湿布、と氷帝で呼ばれるものは長時間付けていると、高確率で肌の炎症を招くが効果てきめんの一品だ。加えて、そんじょそこらの湿布よりも値段が笑えない。
なんとかとハサミは使いようなのだ。

「河村さんも大丈夫ですかね。危ないんじゃ?」

いい人代表鳳が言い出し、河村も香奈から手当てをされていたのだ。青学の母も形無しである。

「言ったよ〜?長くても10分で剥がさないと炎症の可能性が高いって。」

人間性皆無でも、医者は医者だ。言うべき事はちゃんと言っている。

「香奈!手塚の野郎を手当てしろ!好きなだけ手厚くやれ!」

日吉の試合もそっちのけで香奈は、いかにも重そうな救急箱を持ちよれよれと歩きながら手塚へと近付いていった。

「香奈ちゃん、ゴメンね敵なのに…。」

「英二、信濃さんにそういう概念は無いから。」

治療をスムーズに行えるようにするだけの香奈は、日本では中学生。医師免許が生きる事は無いのだ。

「患部を出して〜。清拭するよ〜。」

「清拭…?」

「ツッコミすんなマムシ!訳わかんねぇ説明されるぞいやマジで!」

上半裸の手塚を、タオルで一度拭いてから更にアルコール消毒済みタオルで拭く徹底ぶり。
もう少し、お互いに意識があれば何かあるだろうが無い。

「冷却するから痛かったら言ってね〜?」

冷やす事だけを考えた、とんでもない冷却スプレーを肩から肘に浴びせる。距離を取らなければ、痛い上に真夏に凍傷を引き起こすのだ。

「わ、冷たーい!いいなー手塚。」

「信濃、コレは何だ?」

「冷却スプレー?って言われたよ〜。至近距離ならマイナス12℃。」

どんな冷却スプレーだ、と思わずにはいられないが。手塚はあれもこれもと香奈特製と呼ばれる物の、被験者になっていた。

「肩より、肘の慢性炎症が触診で気になるから病院行った方がいいよ〜。」

当然、病院で驚かれた手塚であった。

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