理系バカと呼ばれ | ナノ
指示語も無いのに




大集合した立海メンバーには目もくれず、小さな手からは予想すら出来ない速さで打ち込んでいく。当たり前と言えばそうなのだが、香奈が携わる研究についてのメールは、外部で送信しないよう言いつけられていた。それをいいように解釈して、書くのはいいのだと実行している。
USBメモリにデータを保存し、香奈はパソコンをシャットダウンさせて立ち上がった。

「もういいや〜。」

時計を見て呟いたのだが、ジャッカルと柳生は胃を押さえた。
香奈は、ファイルとポケットに入るような物しか持っていないのだ。昼休み、本来なら昼食の時間なのだから、香奈の言いたい事が解る者もいる。

「…どうしたんだよ、ジャッカルも柳生も。」

「丸井、時計を見ろ。」

ジャッカルと柳生と香奈以外が時計を見て、のんびり歩き出した香奈の髪を反射的に掴んだ。

「ん?」

動けなくなった香奈に、幸村はにっこりと笑いかけるが…とても怖い。

「香奈、お昼ご飯は?」

「空腹じゃないよ〜?」

のほほん、と答えた香奈を心得たとばかりに仁王が抱え、笑顔の恐ろしい立海メンバーに連行された。
フォーマルなスーツを着た小さい子を誘拐しているような図だ。
だが、声をかける勇者は居なかった。威圧感溢れるメンバーが、力いっぱい髪の毛を掴んで青筋を浮かべている者もいるのだ。
香奈は、研究最優先だから生理現象すら無視する。それに慣れると、空腹や喉の渇きをあまり察知出来なくなっているのだ。

「香奈は好き嫌い無かったよね。はい、あーん。」

「あーん。」

屋上にて、心中複雑なメンバー達から餌付けよろしく弁当やパンを食べさせられていた。水分は、赤也がひとっ走りしてスポーツドリンクだ。

「香奈、また軽くなったのう。」

香奈は仁王の膝に乗せられて、幸村や丸井からあれこれ与えられている。真田や柳生は、仁王達に頼んで弁当を分ける状態だ。

「約35キログラムだったよ〜。」

「痩せすぎではないか?貧血になりかねないぞ。これを食べろ。」

香奈に余計な事を話させないように、立海メンバーは心を砕いていた。油断すれば、理系知識が連発されて異次元に思考が飛ぶ。

「満腹感あるよ〜。」

「はぁ!?香奈先輩こんだけで!?マネージャーやってんのに!?」

「体ちっちぇえからじゃねぇのか?」

「ジャッカル、ブンちゃんこんなんでガツガツ食っとるぜよ。」

立海メンバーでは最も小柄な丸井。香奈を押さえつけたまま、賑やかな昼食となっていた。無論、丸井のお菓子好きが焦点だ。

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