理系バカと呼ばれ | ナノ
良すぎるのも問題
実物を見なければ、信濃香奈と言う科学者は中年から初老の女性と勘違いされる事が多い。
腕は確かなのだから、直接依頼がやって来る事も稀にある。
「今日は〜依頼で学校お休みだから〜お弁当いらな〜い。」
「左様で御座いますか。お気をつけて行ってらっしゃいませ。」
依頼についての質問は厳禁である。依頼者がとんでもなくビッグな存在だった場合、口封じが待っているからだ。
寝癖だらけの髪を梳かれ、フォーマルなスーツを着ても…やっぱり不気味なものは不気味だ。
「立海大学附属の〜高等学校で〜ソフトウェア改善行ってきまーす。」
出掛ける際に放った何気ない、香奈の一言にメイドは一瞬固まったが。そこはプロの矜持、いつも通り送り出したのだった。
すぐさま跡部に連絡され、立海メンバーが血相を変えるまで15分。
「香奈先輩がなんで立海来んすか!?」
「赤也、落ち着いて。香奈は理系バカなんだよ?理系ならなんでもかんでもやるんだよ?辻褄は合うじゃないか。」
それは多大なる誤解なのだが、中学生の彼等にはそう見えても仕方がない。とりあえず、高校生の無事を祈るしかないのだ。
香奈に目を付けられると、厄介な事にしかならない。
「遅いぃぃぃ!まだこんな旧型CPUに乗っけてフリーズしないとかなんで考えないのっ!?」
パソコン室にて、香奈は半狂乱になりながらひたすら作業をする。
ソフトウェアでは最先端を突っ走る香奈にとって、旧型をいつまでも使う事そのものが間違いに思える。金持ちである事と、タダであれこれ試作品を貰ってはいじっていたプロ根性のなせる技。
一度出来上がれば、後はひょいひょいコピーを片手にパソコンからパソコンへと移動を繰り返す。頼まれた以上の事はしないのだ。
面倒くさいから。
「ホストも遅い!管理者決めないのここ!?」
作業中、これでもかとやかましい香奈。比較対象が自分に近しいプロが使用するパソコンであるが故に、通常が桁外れなのだ。この辺りは、世間知らずの大人の事情を考えない年頃の子供らしくはある。
「あ、いたいた。幸村君!香奈いたぜー!」
時間が流れるのは早い。朝早くからパソコンに張り付いていた香奈だが、もう昼休みだった。
作業は終えて英語でメールを作成していた。有効活用と言えば聞こえはいいが、単に昨夜書きかけのままだったメールを仕上げただけだ。
立海メンバーは、何かやらかしていないかとチェックに入ったのである。人間性が皆無だから、ととことん信用されていない。
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