理系バカと呼ばれ | ナノ
奴がウチの変人だ




放課後になると、女子生徒達は男子テニス部の応援に向かう。ファンクラブまである、熱狂的な代物だ。

「キャァァァァ跡部様ぁぁぁ!!」

「忍足君カッコいいー!こっち向いてぇぇぇ!!」

その中で、携帯のような物を片手にしゃがみ込んでいる小さな影。当然ながら、香奈だ。
応援する気の欠片も見当たらず、片手で何かをノートに書きながら機械を凝視している。ここ数日は応援の音がどれだけ大きいのか、と計測している。騒音レベルまで到達しているだろうと推測はしていたが。
一頻り、応援をするだけして帰って行く女子生徒達を見る事も無く、ノートとにらめっこ。
香奈の頭では数字が乱舞している。

「あれ、信濃。また実験か?」

「うん。計らないと〜結果が出ないから〜。…宍戸君?はランニング〜?」

未だに名前をはっきり覚える努力をしない香奈に、宍戸は呆れたように頷いた。半ば病気扱いになっているのだ。

「おぅ。何の実験やってたんだ?」

「男子テニス部の応援。今日は〜92人が応援してて〜88デシベル〜。100の壁は分厚いね〜。」

宍戸には理解不能の数字だが、とりあえずうるさい事にうんざりしていた。今ですら騒音呼ばわりしているのだから、100デシベルなど想像を絶する。

「…とりあえず100にならない事を祈る。」

「かなり聴覚に〜影響する事だからね〜。後は〜生徒会長の手紙平均値〜。見てみる〜?」

宍戸がノートを覗き込んだのだが、数字と汚い字で書かれたアルファベットしか解らない。
香奈個人では纏めているが理解不能。

「とりあえず結果だけ教えてくれるか?」

「学校ある日は〜平均34だよ〜。」

跡部様の人気は凄まじい。何せ氷帝中等部には634人しか女子生徒が居ないのに、毎日平均34通ものラブレターを渡されているのだ。校外の生徒も含まれるが、それでも充分面倒そうである。

「…信濃もホントよく調べるな。」

「学校で出来る実験は〜限られてるからね〜。」

またノートとにらめっこを始めた香奈の頭を撫でて、宍戸は部活に戻った。妙にベタつく手に、ワックスでも使っているのか?と見当違いで、触った事を心の底から悔やむまで、後19時間程度。

「応援者の人数も10人程度の増減から考えると、高音である事から集中力低下は免れない、と結論付けざるを得ない。」

ノートに結論を記し、香奈は帰宅した。女子生徒達からも、また何か怪しげな実験を。と変人扱いされているからファンクラブに目を付けられない。

- 4 -


[*前] | [次#]
ページ:






メイン
トップへ