理系バカと呼ばれ | ナノ
動物愛護氷帝




理系バカと散々呼ばれている香奈だが、要するに理系ならば大概実行可能な知識を有している。流石に1人でロケットを作って発射、などという事は無理だが。
医学にも精通し、更に獣医学の心得を持つ。

「香奈!こいつ、治療してやってくれ!」

部活に励む氷帝。ロードワークから帰ってきた宍戸は傷だらけの子犬を抱えていた。

「亮君、景吾君、違法だよ〜?」

バレなきゃいいじゃない、とは考えない。しかし子犬は呼吸が荒く、深い傷を負っている。時間は無い。
手っ取り早く、治療が出来るのは香奈だけだ。しかし無免許なのだから、許されない事である。

「とりあえず生かせ!後で医者に診せる!」

「はぁい。」

ぶつぶつと何事かを言いながら、止血だの骨折の有無だのを確認しては処置をしていく。

「しゅーりょー。内臓に影響は無し、反応から察するに後ろ足に二カ所の骨折と裂傷は設備がないから縫合もレントゲ」

「香奈、そんな事言われても解らないから。」

滝がラケットで思い切り叩いたが、縁ではない。麻酔など出来ないから、子犬は鳴き声を上げ続けていたのだ。そればかりは責められない。

「治療したのはいいけど〜誰も飼わないなら私がじっけ」

「俺んちで飼う!跡部、獣医は!?」

「部活が終わったらな。とりあえず生かせられたんだから練習しろ。」

大事なら、香奈がすぐさま専門医を呼びつけただろうと思い込んでいる。無精はまだまだ健在なのだが、最先端の理系でトップを突っ走っていると勘違いされているのだ。
とうに他の科学者が終えた研究さえ、香奈は試すのだが。

「出血多量で貧血になってるよ〜?」

「それを早く言え!」

見て判らないのか。と香奈は目を瞬かせた。傷口の大きさと体格で予想出来るだろう、と香奈も勘違いしていた。
宍戸と跡部は獣医に診せるべく抜け出し、香奈は部活が終わるなり説教の嵐に見舞われた。

「…やっぱり理系バカだ。医者がビビる応急処置しやがって。」

「思いっきり素人、とは言えねえからな。何してんだかサッパリだし。」

過去に謎の多すぎる女、香奈は幼い頃から親の知人、つまり理系のプロフェッショナルにマンツーマン指導を受けた。パズルゲームの作り方だの遊び方だのと、とことん理系でインドアな遊びを楽しんでいたのだ。それしか知らなかった上に才能もあり、爆走した結果が現在。
子犬は無事宍戸が飼う事になり、犬のリハビリも兼ねて散歩が日課となったのだった。骨折後は、安静にしなければならないので筋力が落ちる。

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