理系バカと呼ばれ | ナノ
生命の神秘




語られた武勇伝ならぬ無精伝。髪の毛を伸ばしている理由さえも、凄まじく下らなくツッコミどころが満載すぎた。

「な、なぁ信濃だっけ?俺は神尾ってんだけど。」

「名乗っても意味ねぇよ、信濃先輩は。覚えようとすら思わねえから覚えてねぇし。」

海堂のあまりにも素っ気ない一言だが、事実なので誰もフォローしない。神尾を見上げ、香奈は首を傾げている。

「マジか?マムシ。」

「マムシ〜?この辺りにいるなら〜ニホンマムシだよね〜?毒採取して〜1ヶ月断食本当に出来るか〜見た〜い。」

そもそも関東、加えて都内にそんな毒を持つ生物が野生化している筈が無い。海堂はすかさず、香奈の頭を叩いた。

「居ません。俺のあだ名ッスから。断食させるとか先輩生き物何だと思ってるンスか。」

「理系バカでも命の大切さぐらい知ってるでしょ?香奈先輩。」

動物好きの海堂と越前が香奈を糾弾するが、医学の進歩に犠牲は常にある。香奈がかつて、その危機に晒されていたのだから。

「私は飼ってないけど〜実験用マウスとかいるよ〜?便利らしいね〜。」

忍足と海堂が同時にひっぱたいた。手塚と橘は握手をして、頷きあう。

「橘、解ってくれたか。」

「あぁ。この信濃に人間的な良心を教えたい。」

学校の枠を越え、着実にその数を増やしていく香奈を真人間にする会。最初は女の子らしさを教える筈が、人間的にダメすぎた。
頭を叩かれた香奈だが、キョロキョロとマムシを探そうとしている。

「…何しとん?」

「マムシ探してるの〜。」

髪の毛を思い切り引っ張られた。そこまでの熱意がありながら、どうしてこちらの言い分に耳を貸さないのかと腹が立つ。

「ほっといたらいつまで経っても探しかねませんよ部長。」

「…そうだな。橘、一応渡しておくがやるな。呼吸困難になるぞ。」

乾が一枚のメモを渡し、香奈を引きずりながら帰って行った。中身は勿論、体力テストだ。午前と午後に分けて、凄まじい量を要求される。香奈か、データを取る人材が居なければ、ただのイジメにしかなり得ないものだ。

「…1日で、これを?」

目を通した橘は愕然としていた。中身はともかく、スケジュールが洒落にならない。
手塚は、流石に彼らを余計追い詰められる程の外道にはなれない。結局は他人事だが、同じ目に遭えとは思えないし万が一の事があったら弁解出来ない。

「…信濃って、どんな生活してんですかね。ガリガリに痩せてるし。」

「やたら胸もでかく見えたけど仕込んでんのか?」

団結力はあるが、思春期の健全な男の子である。

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