理系バカと呼ばれ | ナノ
夏休み三年分




越前が南次郎に聞いてみればいいだろうと言い出し、香奈は部活を強制的にサボらされて、越前家へ連れて行かれた。

「オヤジ、こいつ。信濃香奈って」

「香奈ちゃぁぁぁんっ!久しぶりだなー!いやぁでっかくなったなぁ。」

越前の紹介は無用だったらしく、南次郎は香奈を抱き上げた。身長もそうだが、明らかに南次郎の視線は胸に向かっている。

「だぁれ〜?」

高い高いをされながら、不思議そうにしているが南次郎は笑顔だ。

「やっぱり覚えてないか。香奈ちゃん小さかったし付き添いだったからな。」

「…どういう関係なの?越前。」

不二が訳が分からない、と越前を見るが越前も香奈と南次郎の関係が解らない。当の香奈は南次郎に抱き締められている上に、記憶力が偏りすぎだ。
当てにならない。

「オヤジ、知り合い?」

「当たり前だろ。奇跡の外科医、小学校五年生で医師免許取って、手術は全部成功。俺のダチが世話になったんだよ。夏休み利用して3年間かけて取ったってニュースにもなったし。すっかり可愛くなっちゃってなぁ、俺もこんな可愛い娘欲しかった!」

どこからツッコミを入れるべきか、凄まじい熱弁。
菊丸が、げんなりしながら呟いた。

「俺何があっても信濃に診察されたくない。」

「何でだ?腕はいいぞー?頭もいいし可愛いし。あ、やっぱり香奈ちゃんだ。まだ研究してんのか?」

「してるよ〜。」

左耳の裏を見て、南次郎は軽すぎる香奈を片腕で抱えた。昔よりは、まだ髪が短かったのだ。
床につくと、流石にハサミで切る。

「俺もそんな家族イヤだから。人間味無いし。」

「んなちっちゃい事気にするなよ、まだ香奈ちゃん中3だぜ?これから幾らでも変わるって。女は恋でも変わるからな〜。」

その可能性に、一同は賭けたいのだ。無垢で幼く、科学一直線だから。
しかし、香奈の実情と南次郎の性格を知る越前は…心中複雑すぎた。傍から見れば微笑ましい光景なのかもしれないが、一歩間違えれば犯罪なのだ。

「あ、母さんに会わせよう。母さーん!ドクター信濃が来てくれたぞー!」

香奈を交え、英語で会話を始める3人。ひたすら撫でられているので、青学メンバーは見ているしかなかった。

「…越前のお父さんは、器が大きいんだね。」

「家族じゃない?」

大人の懐の深さと、まだ若いと笑われる理由が少し解ったメンバー。
香奈と越前が知り合いだった衝撃の過去に、越前が一番ダメージを受けていた。こんなにインパクトのある香奈を、忘れていたのだから。

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