理系バカと呼ばれ | ナノ
はい次の技どうぞ




氷帝も立海も餌食となった技の理論解明。青学も香奈だけに見せるなら、と竜崎からゴーサインが出た。

「うん、解ったから次いいよ〜。」

自分は理論解明だけを目的にしているので、やろうとは思わない。だが、プライドをへし折られた越前が拳を震わせていた。殴りたい衝動に駆られている。
不二もトリプルカウンターを、あっさりスルーされた感が否めなかった。

「…部長、あいつぶん殴っていいッスか。」

「止めろ。」

香奈の頭では、計算式と筋力のバランスなどが乱舞している。伊達に歩くスパコン、と滝から言われていない。
越前や菊丸が、凄まじい形相で睨んでいるが…香奈は頭を揺らしながら技を見続けている。乾はコレという技を持たないので、香奈の独り言を聞いていた。
不気味極まりない図だ。

「遠心力、跳躍、反動、動体視力から仮定し算出される数字は」

「…世にも珍しく希有な才能を持つ、マネージャーか…。」

注目すらされていない平部員が、半ば怯えながら練習に励む。
香奈の才能は確かだが、言い方に問題があると乾はノートに書き綴った。消えるサーブは死角と錯視を利用した、とまで言い切ったのだ。ダンクスマッシュは目が追いついていない。
肉体的には標準、またはそれ以下。

「見えてるのか?桃城のスマッシュ…。」

「どうだかなー。信濃さんあんなに細いしスポーツやってなさそうだよ?」

先入観からだろうが、正解だ。

「今の…面白いね!もう一回やって!」

結局、リテイクを要求されたのは海堂のスネイクのみだった。

「信濃、どうだった?」

「基本的に、ボールの回転を利用したものが多いね〜。効果的なの〜?」

テニスについては、全くと言っていい程ルールを把握していない。
心理戦となるのだが、門外漢でしかないのだ。だからラケットを持った河村に興味を示さなかった。事例として、頭には残しているだけだ。
手塚ゾーンもあっさり看破し、乾に考察を聞かれて延々と言っている。香奈を真人間にする会が作られた理由も、彼らは痛切に理解していた。

「ね〜、体力テストやってくれない〜?そうしたら詳しく説明出来るよ〜。」

乾にとってはデータを取るチャンス、としか思えなかったが…実行後、心の底から後悔して会に参加する事となった。

「あの理系バカ…どっかで見たような。」

「信濃と、アメリカ帰りのおチビが?」

インターナショナルな香奈の人脈、アメリカでの高い評価。知らなければ、辻褄が合わないのだ。当時小学生だった2人は、会っている。

- 53 -


[*前] | [次#]
ページ:






メイン
トップへ